光の風 〈帰還篇〉-4
「なぁに?」
「リュナは…貴未がこの世界の人間じゃないことは知っているか?」
「世界?」
唐突な話にリュナは思わず難しく考えてしまった。しかしおそらくそれは答えの出ないもの。カルサは素早く話を続けた。
「あいつはこことは違う次元から来た、異世界の人間なんだ。」
「異世界…。」
驚いてはいるが、リュナにはその事実を受けとめることしかできなかった。しかし急に言われても実感がわかない。リュナは考え込んでしまった。
「でも、どうしてここに?」
当然の疑問だった。リュナの質問にカルサは少し考えてから答える。
「貴未には次元を越える力があるらしい。次元を移動しようとして、シードゥルサに迷い込んだみたいだ。」
「そうなの…。」
それは貴未にとっては不幸な出来事。彼の大切な過去を本人ではなく、人の口から聞いて良かったのかリュナは不安になった。
しかし、どうしても気になることがある。
「貴未は…帰れないの?」
「あいつの力を発揮してもらって、今は色んな場所に調査に行ってもらっているが…。どんなに違う次元に行くことができても自分の国には帰れないらしい。」
「どうして?」
「あいつの国自体が特殊な次元にあるらしい。詳しくは知らないが…。」
そういうと、二人は貴未が去った方向を見た。長い長い通路の先、一人歩く貴未の姿があった。
貴未の気持ちを考えると何とも言えない気持ちになる。
やがて高らかにファンファーレが鳴り響き、城下町は一気に祭りムードに変化した。
その音は城内にまで届き、誰もが軍隊の帰還に胸を躍らせた。遠くの方から足音が響いてくる。確実にそこまで来ていた。
カルサは国王として彼らを迎えるために正装し、軍隊を待つ。その傍らに風神としてリュナが立った。
その光景は帰還したばかりの軍人達には不思議なもので、彼らの疑問を少しでも和らげるためリュナは深々とおじぎをしてみせた。
「陛下!我ら遠征部隊、只今戻りました!」
軍隊より数歩前に出て男が叫ぶ。力強い瞳、真っすぐにカルサを捕えていた。
「ご苦労だった。城内に食事、風呂、部屋も用意してある。ゆっくり休んでくれ。」
カルサの言葉を聞くと男は敬礼し、りりしく叫んだ。後の者もそれに続く。
「はっ!ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
そしてカルサはリュナを前にやり、彼らの目の前に立たせた。まだ知らぬ女性の登場で彼らにざわめきが走る。