嘘つきレン-1
第33話 〜〜「嘘つきレン」〜〜
ほんと、テメエらいい加減にしろよ・・・。
手首をかっ切ったレンは、一晩だけのお泊まりで済んだらしく、タカが訪れたときは、すでにマンションに戻っていた。
エントランスのインターフォンから来訪を告げると、いつものように嬉しそうに応対したレンが、すぐにホールの扉を開けてくれた。
エレベーターで15階に辿り着くなり、玄関から顔を出していたアイツが嬉しそうに手を振ってくる。
ほんと、お前ってば友達思いなのか、友達がいないんだか・・・。
このときに気付くべきだったんだよな・・。
だって、奴は素足にガウンを羽織ってただけだったんだから。
奴に案内されて部屋に入った。
まったく警戒していなかったから、リビングからメグミちゃんが、いらっしゃいと、いきなり顔を出したときには腰が抜けるほど驚いた。
メグミちゃんがいたから驚いたんじゃない。
彼女がほとんど裸だったから、たまげたわけだ。
メグミちゃんは、まだ幼さの残るみずみずしい肢体に指の幅ほどのベルトで作られた拘束具を着ているだけで、ほかにはなにも着ていなかった。
下着さえも着けずに、可愛らしいおっぱいやお尻を丸出しにして、アソコはかろうじて細いハーネスが隠していたが、ほとんどが丸見えに近い姿だった。
ど、どうした、おまえ!?
目のやり場に困るどころじゃなかった。
思わず回れ右をして視線を逸らしていると、メグミちゃんが、ひょいと後ろから顔を出してニヤニヤと見つめてくる。
「あれぇ?タカさん、照れてるんですかぁ?」
焦りまくりのオレとは対照的に、当のメグミちゃんはまったく平気な顔。
い、いったい、なにがあった?・・。
「タカ、そんなとこに突っ立ってないで早く座りなよ。」
レンまでが余裕の態度で、何がなんだかわかりゃしない。
お前ら、宇宙人にでもさらわれたのか!?
「で、そのカッコはなに?」
目のやり場に困るというか、テメエらいい加減にしろよ、というか・・。
リビングのソファに、ふたりと向かい合わせに座ってた。
メグミちゃんは、まったく恥ずかしがる素振りも見せず、おっぱい丸出しのまま、となりのレンにしなだれるようにもたれて甘えまくり。
「だって、お兄ちゃんが喜ぶんだもん♪」
おい、どうしたお前?
つい昨日まで、ボロクソに罵ってたよな?
えっと、確か13歳だっけ?・・・。
13歳といえばお年頃のはずだが、メグミちゃんはレンにもたれながら、うっとりとした眼差しを奴に向けるだけで、オレの視線なんてまったく気にする素振りもない。
夕べは、泣き顔ばかり見せられたわけだが、今は打って変わって、どこか開き直ったように明るい表情まで見せるメグミちゃんは、病院であった女の子とは別人のようだった。
お前、マヂで宇宙人にさらわれてねえか?・・・。
ずっとレンに寄り添い、羨望の眼差しで奴を見上げる瞳には、信頼しきった力強さのようなものがある。
対して、そのメグミちゃんに慕われるレンの方はといえば、足を組んで豪快にソファにふんぞり返り、おっぱい丸出しのメグミちゃんに見つめられながら満足そうにワイングラスなんか傾けてやがる。
バカ丸出しだった。
おまえ、そのワイングラスってさ・・。
よく映画なんかで見るよな。
手のひらに余るほどのデカいワイングラスを中指と薬指のあいだにはさんで、中身をクルクル回すやつ。
ほんとに回してた。
「うーん・・・トレビアン・・。」
アホだ・・。
氏ね・・。
いかにも高そうなガウンを羽織ってメグミちゃんを侍らす姿は、さしずめ間抜けなブルジョアジー。
お前、そのガウンの下は裸だよな?
ぴたりと肌を寄せてくるメグミちゃんに満足したように笑みを浮かべた奴は、ワイングラスの中身を口に含むと、それを飲み込みもせずに、じっと見つめるメグミちゃんの口へと運んでいった。
ああっ!?
ふたりの唇が重なり、メグミちゃんが喉を鳴らしてコクコクと飲んでいく。
顔が離れても、濃密な視線で見つめ合っていたふたり。
今すぐにでも、やりだしそうな雰囲気だった。
「あのよ・・・。」
テメエら、オレが来てることを忘れてねえか?
つか、今日はお前に聞きたいことがあるんだよ!
こっちは女を強奪されて腹が立ってるのに、なぜ見せつけられなきゃならん。
てか、お前ら兄妹だろ?
近親相姦をオレにだけカミングアウトした変態兄妹。
「そろそろ本題に入っていいですか?」
下手に出ていってみた。
とりあえず、コイツの家なんで。
「うん、申してみよ。」
メグミちゃんを手に入れて妙な自信でもついたのか、すっかり王様気取りだったアイツ。
テメエ・・マヂでぶっ飛ばすぞ・・。
もうすぐ、顔面蒼白になるくせに・・。