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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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狂乱のあと-8


シゲさんの話を聞いているうちに、どうにも引っ掛っていたことを訊いてみることにした。

「もしかして、野呂課長って、シホたちのことを知ってるの?」

今の話もそうだが、これまでの話を聞くかぎり、どうにもあの課長が今回の件に一枚噛んでいるような気がしてならない。

「なぜ、そう思う?」

シゲさんの表情は変わらなかったが、含みのある言い方ではあった。

「はっきりとはわからないけれど、シゲさんは野呂課長の存在をなぜか隠そうとしていたよね。たとえば今の話だってそうだし、それに、シゲさんたちの先生が野呂課長だったってこともオレに隠そうとしていたでしょ。それってどうしてなの?」

シゲさんは、野呂課長との繋がりを隠そうとしていた。
それは間違いない。
しかし、なぜそこまで隠そうとしたんだ?
それが聞きたかった。
シゲさんが短くため息をついた。

「ここまで来たら隠しても意味がないから洗いざらい教えてやるが、絶対に口外はするなよ。これは俺たちだけの問題ではないんだ。野呂さんにも迷惑がかかることになる。だから、これから俺が話すことはお前の胸の中にだけしまっておけ。」

「う・・ん。」

ずいぶんともったいぶった言い方だった。
ことの重大さがシゲさんの表情から読み取れる。

「実は俺やシホたちがこの街に住めるようになったのは、野呂さんが色々やってくれたおかげなんだ。」

「野呂課長が?いったい、あのひとがなにをしたの?」

意外だった。

「シホの件で青森から逃走を図るときに俺たちにはしなくてはならないことが幾つかあった。その中の一つに、移転記録の改ざんがあったんだ。奴らに見つからないようにするためには、新しい住所を秘匿しなけりゃならない。だが、俺たちにも生活はあるわけだから、ちゃんと転入届を提出して新しい住所を手に入れる必要がある。しかし、まともにそれをやってしまえば足跡を辿られて即座に居所が知られてしまう。だから附票や転入届をどうにかして偽造する必要があったんだ。附票は、わかるな?」

「えっと・・・附票は戸籍にくっついてる住所の変更記録でしょ?」

「そうだ。住民票ならば転出する際に適当な住所を書いてしまえば、それでしばらくは目くらましになる。しかし、住所記録の履歴である附票だけはどうしようもない。だから何とかして転入先の附票を改ざんする必要があった。それに転入先には転出元の異動証明も必要だから、それも偽造しなければならない。それで、そんなことを頼める相手を考えたときに野呂さんのことを思い出したわけさ。」

「よく、そんなことを承知したね。だってそれって紛れもない犯罪行為でしょ?」

なるほど・・口外できないわけだ・・・。

「まあ、確かにそうなんだが、野呂さんも児相に勤務していた時期があってな、シホのことを説明したら快く強力してくれたよ。あのひとの倫理観と俺の倫理観は似ているところがあってな・・・。というか、俺が野呂さんに影響されて、今の倫理観に辿り着いたようなものだが・・・。シホが住んでいるアパートから俺たちが住む家まで世話してくれて、この街に住むための手はずをすべて整えてくれたのは野呂さんなんだ。まったく、あのひとには頭が上がらないよ。」

「へぇー。」

「シホの戸籍にコトリちゃんを紛れ込ませたのも野呂さんがやってくれたんだ。ただ、おおっぴらに公開してしまうと、どこでボロが出るかわからないから、普段は閲覧できないようにちょっと細工をしておいたんだ。」

だから閲覧できなかったのか・・。

「野呂課長って、すごいんだね。」

「ああ、あのひとは本当にすごいひとなんだ。裏も表も知り尽くしたまさに地方行政の生き字引みたいなひとさ。だから、お前を水道課から異動させるときに、あのひとの下に預けたんだ。」

すいません・・そのような配慮があったとは知りませんでした・・・。

「心臓を悪くされて青森を去ると決まったときは、オレも半身を失ったような気持ちになったもんだ。偉大な俺の師匠だったからな。あのひとから教えていただいたことは数知れない。もし、野呂さんがあのまま青森に居続けてくれたなら、俺の人生もまた変わっていたかもしれんな。だが、結果的にはこうして俺やシホを救ってくれることになったわけだから、人生なんてどこでどう転ぶかわからないもんだ。だから、「生きる」ってことは面白いんだ。」

最後は、自分自身に言って聞かせているようだった。

「とにかく一日だけ待て。」

今すぐにでも飛び出したい気持ちはあった。
だが、シゲさんにそこまでいわれては無視するわけにもいかない。
逸る気持ちを抑えて、一日だけ待った。
コトリに会いたい気持ちはあったが実家へは帰らなかった。
アパートにも戻らなかった。
青森へ行くと決まって、オレは再び、レンのマンションを訪れていた。


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