狂乱の夜-6
『生きていてよかった……。』
エレベーターに乗せられて下に運ばれるとき、やっと重丸が口を開いた。
悲しげな声だった。
『コトリちゃんは、元気だ……。』
その声を聞いて、わたしは泣いた。
もし、コトリのことがなければ、わたしは重丸とこれほど深い接触を繰り返すことはなかったかもしれない。
それからというもの、重丸からは、ことある毎に父から離れろと忠告されてきた。
青春時代をともに過ごしながらも、その頃はすっかり敵同士だったふたり。
何を言われても、わたしは耳を貸さなかった。
父を欲しがって堪えきれない夜を過ごしたあすなろ園での暮らしが身に染みていた。
あの時の切なさがいつまでもわたしを父から離さなかった。
でも、コトリが大きくなるにつれて会いたい気持ちが大きくなっていくと、いつからかわたしは父とコトリを天秤にかけるようになっていた。
そして、次第にコトリへの傾斜が大きくなり始めていた頃に、コトリの事件が起きたのだ。