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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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狂乱の夜-4



4年前……。

『コトリがっ!?』

父に言われて、五所川原のメモリーカードを重丸に渡す役目を任された。

『ちょっと待って!どうしてあの子がそんな目に!?』

重丸と会っていたのは、彼が指定してきたホテルの地下駐車場。

『詳しい原因はわからん。だが、取りあえずコトリちゃんの命に別状はないから安心しろ。』

安心って……。

『安心できるわけないじゃない!あなたを信じて置いてきたのに、こんな事になるならわたしと一緒にいたほうが安心できたわよ!』

そんなことができないことは、わたし自身が一番わかっていた。
あの子をわたしと同じ目に遭わせたくない。
その思いだけで必死に堪えていた時期だった。

『落ち着け。取りあえずコトリちゃんは無事なんだ。首を絞めた子も今は違う養護施設に送致してある。同じ事件が起きる心配は、もうないんだ。』

園を出てから4年が経っていた。
たまにこっそりと物陰から眺めたりしたことはあったけれど、あの子を腕に入れなくなってから久しかった。
胸に抱いていた頃の温もりは、いつまで経っても消えてくれなくて、思いっきりコトリを抱きしめることのできない切なさに枕を濡らす日々が増えていた。
会えば不幸にしかならないとわかっていたけれど、どうしてもあきらめることができなかった。
そんなときにコトリが殺されかけたと聞かされた。
普通でいられるわけがなかった。

『誰なの?……。』

コトリに手を掛けた相手の子が許せなかった。

『それを知ってどうする?お前には関係ないことだ。』

『関係ないわけないでしょ!?コトリはわたしの子なのよ!ねえ!誰なの!?いったい誰がコトリにそんなひどいことをしたのよ!?』

相手の子を殺してやりたい。
ううん……そんなこと、ほんとは思ってなかった。
あの子のそばにいてやれない自分が情けなかった。
そばにいて助けてあげられなかった自分が、呪わしかった……。

『お前にそんなことが言えるのか!?お前は、あの子を捨てたんだぞ!あの子を見捨てて、アイツの元に帰ったんだぞ!』

その頃の重丸は、わたしの素性を知っていた。
再会した彼に、ある程度の事情は打ち明けていたからだ。
父と旧知の仲だったことはわたしも驚いたけれど、それは重丸も同じだった。
いいえ、彼のほうが何倍もショックを受けていた。
高校時代のライバルはヤクザになり、まだ幼い自分の娘に売春を強要するようなひとでなしになっていた。
正義感の強い彼がショックを受けないはずがなかった。
でも、すでに政界に転じようとしていた彼に、打つべき手なんてなにもなかった。
彼の頼みとしていた政治家たちは、みんなうちの顧客だった。
何もできないとわかっていたから、事情を打ち明けることもできた。
それは、父からコトリを守ってもらうためだった。

『仕方がないじゃない!そうしなければコトリだってわたしと同じ目に遭わされるのよ!置いてくるしかないじゃない!助けたいから置いてきたんじゃない!』

半分はほんと、半分は嘘。
コトリを守りたかったのは嘘じゃない。
でも本当のところは父に会いたくて、自分から逃げ出したのだ。
もし、あのときわたしがコトリを連れて一緒に逃げていたら、重丸が運ぶトランクの中に入っていたのはわたしではなく、コトリだったのかもしれない。

『お前が、正直に打ち明けてさえくれていれば……あのとき、アイツのことを教えてくれてさえいれば、まだ、救うことはできたんだ……。』

確かにそうなのかもしれなかった。
出会って間もない頃であったなら……まだ父が政治家たちを後ろ盾としていない、あの時期であったなら……、彼にだってなんとかすることはできたのかもしれない。
でも、再会した頃の重丸には、もはやそんなことは不可能になっていた。
その頃の彼は、身の丈に合わない大きな力を手に入れようとして、自分の信念を曲げざるを得ない状況に追い込まれていた。
だから、彼だって、わたしを責めることなんてできなかった。
案の定、彼はすぐに口を噤んだ。
わたしがコトリを捨ててしまったことを後悔していたように、重丸もまた、強大な力を得るために自分の信じる正義を捨ててしまったことを後悔していた。
重丸と久しぶりに再会した日のことは、今でもよく覚えている。
県の臨海工業地帯造成工事が決定する2ヶ月前、意外なところで、わたしたちは再び巡り会うことになった。


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