遠き日々-15
それからも病室での取り調べはつづいた。
コトリは、わたしと同じ部屋で眠ることを許されて、わたしは束の間幸せだった。
シンドウと重丸が聞いてくることに、答えられることは答えた。
でも、Thrushの存在や、そこでわたしたちが何をしていたのかは黙秘しつづけた。
売春は父親に強制されたものと判断され、質問は次第に父親の所在とホテルでの刺傷事件に関することだけに限定されるようになっていった。
驚いたことに、彼らは父たちの犯罪にまったく気付いていなかった。
だから、わたしがうっかり口でも滑らせようものなら、それはたちまちセンセーショナルな事件に発展していったのかもしれない。
何度か警察署にも連れて行かれて、わたしは調書を取られた。
取り調べは、主にシンドウが行った。
都合の悪いことはすべて黙秘した。
父への恐怖が、わたしに口を開かせなかった。
コトリに乱暴しようとしたあの男だけは、どうしても許せなかったから、話せることはすべて話した。
「ミコシバ」と名乗る刑事が立ち会ったとき、無理矢理じゃなかったのか?とおかしなことを訊ねた。
そして、トランクは奴が持ち込んだんだろう?とわたしに同意を求めた。
わたしは、あいつにつけられた首筋の傷を見せた。
そして、いきなり部屋に連れ込まれて乱暴されたのだといって泣いた。
ミコシバは、その証言を絶対に覆すな、と泣き伏せるわたしを見ながら笑っていた。
シンドウは、その場にいなかった。
わたしとコトリは、重丸に付き添われて養護施設に預けられることになった。
まだ取り調べは残っていたけれど、ひとまず平和な日々がわたしたちに訪れた。
このまま無事に過ごせればいい、なんて思っていたけれど、結局わたしは父の元に帰ってしまった。
あの人が奪い返しに来たとき、わたしは自分の意志で父の元に走ってしまったのだ。