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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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遠き日々-14



目があの人によく似ていた。
レンズ越しだったけれど、本当に彼女にそっくりな瞳だった。
だから、思い出してしまった。
そして、思わず彼女の誕生日と名前を口に出してしまっていた。

「7月22日……シホ……」

何度も彼はつぶやいていた。
もしかしたら、本当にシホお姉ちゃんのお父さんだったのかもしれない。
そんなことを心の中で少しだけ思ったりしたけれど、それは自分で打ち消した。
この絶望的な世界にそんな奇跡的なお話しなんてあるわけがない。
でも、彼の中に彼女の面影を見いだしていたのは確かだ。
わたしをずっと守ってくれたあの優しい瞳に再び出会えて、嬉しかった。
だから、わたしはこの人たちを信用する気になったのかもしれない。

「あの男が君を買ったんだね?」

それからも病室での取り調べはつづいた。
わたしは素直に応じた。
事件のことは、主にシンドウと名乗る若い刑事が訊いてきた。
コトリが乱暴されそうになったことも、あいつが先にナイフを出したことも、刺しているときのことはよく覚えていないなんて、ちょっとだけ嘘もついたけれど、話せることはすべて話した。

「なぜ、あの部屋に行ったの?」

正直にセックスをしに行ったと答えた。

「誰かに命令されたの?」

そう訊かれて、わたしは黙った。

「君以外にも、同じようなことをしている子はいるのかい?」

それにも答えなかった。
無理強いはしないと決めていたのか、わたしが答えに詰まると、二人は顔を見合わせるだけで深く追求したりはしなかった。

「コトリちゃんのお父さんは誰?」

シホお姉ちゃんと同じ目をした彼が訊ねた。
わたしは唇を結んだまま、それにも答えなかった。
でも、彼はわたしの表情から何かを読み取ったのかもしれなかった。

「コトリちゃんのお父さんは、君のお父さんかい?」

隣りのシンドウが驚いた顔になった。
驚いたのは彼ばかりじゃなかった。
心の中を読まれたような気がして、思わずわたしも彼を見つめていた。
その時のわたしは、本当に父のことを考えていたからだ。

「そうなんだね?」

わかってるといいたげな顔だった。
思わず頷いてしまったのは、父がこのまま大人しくしているわけがないと恐れていたからだ。
きっと、わたしたちを奪い返しにやって来る。
力ずくでわたしとコトリを、またあの地獄へ連れ戻しにやってくる。
だから、彼らに守ってもらいたかった。

「お父さんの命令で、こんなことをしているのかい?」

胸に染み入るような優しい声だった。
わたしは自然と頷いていた。

「そのお父さんは、どこにいるんだい?」

答えてしまいたかったけれど、それだけはできなかった。
そんなことをしたら、わたしだけじゃなくコトリまで殺されてしまう。

「なんて父親だ!」

押し黙ってしまったわたしを見て、若いシンドウという刑事があからさまに怒りを露わにした。

「シンドウ君、今日はここまでにしよう。この子もいきなりでは疲れてしまう。そろそろこの辺で休ませてあげよう……」

シホお姉ちゃんと同じ優しい目をした彼は、いつでもわたしのことを気遣ってくれた。
でも、彼に気を許してはならないと思ったのは、聞き取りを終えてシンドウという刑事が部屋を出て行った後に、そっと彼がわたしに耳打ちしたからだ。

「シホちゃん。今はそう呼んでおくよ……。いずれ本当の名前を教えてくれると嬉しいな……。その日が来るのを楽しみにしてる……。そして、シホという女の子のことを君が教えてくれる日もね……」

彼は、にこりと微笑むとわたしの頭をそっと撫でた。

「僕の名前は重丸だ。これから君とコトリちゃんの面倒を見させてもらう」

迷いもせずに、じっとわたしを見つめていた。

「困ったことがあったら、遠慮しないで、なんでもいってくれ。僕には絶対に君たちを幸せにしなければならない義務がある」

絶対といういい方が気になった。
どうして?と訊いた。
彼とは出会ったばかりで、深い関わり合いなんてなかった。
わたしの問いかけに重丸と名乗った男は躊躇うことなく答えた。

「僕が、君たちのお父さんになるからだ」

彼女と同じ、慈愛に満ちた瞳の男は、わたしの頭をひと撫ですると、にこりと笑って部屋を出て行った。



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