嵐の前-4
ホテル「THRUSH」最上階
小さな妖精たちのハーレム。
狭い造りの部屋だった。
おおよそ人が住む場所とは思えない無機質な空間。
壁に赤いランプが灯り、その下には簡素なベッドが置いてある。
人の立って歩けるスペースは、タタミ一畳分ほどの広さしかなく、さほど高さのないベッドは、客をもてなすためのソファの代わりも兼ねている。
他には、来客を告げるインターフォンが壁に掛けられているだけで、ほとんど家具らしい物は見あたらない。
客のスーツを掛けるための衣装棚らしき物はあるが、それさえも、わずかな幅しかなく、そこには、客を喜ばせるための卑猥な衣装も、何着かぶら下げてある。
まったく居住性や快適性を無視した、純粋に性交のためだけに造られた部屋だが、身体を洗うためのシャワーだけは備えてあった。
衣装棚の横、つまり入り口から入って、右手の奥に、もうひとつドアがあり、そこは、客の身体を清めるためのシャワー室がある。
シャワー室はユニット式のごくありふれたものだが、多少の改造がしてあった。
客の中には、排泄を見たがる者が多い。
そういった客の要望に応えるために、大きめの排水孔が、わざわざシャワー室の真ん中に造ってある。
そして、ここは、彼女たちのトイレも兼ねていた。
女たちは、もよおしてくると、排水孔のフタを外して用を足し、水と薬を使って汚物を流す。
匂いは、換気扇が吸い出してくれる。
詰まることを考えて、紙を使うことは禁止されていた。
だから、彼女たちは、いつも用を足し終えると、シャワーで自身の汚れを拭うのが習慣になっていた。
トイレがないのだから、使用済みの生理用品の始末に困ると考えるが、そんな心配をする必要もない。
なぜなら、ほとんどの女たちは、まだ生理など無縁な年齢でしかないからだ。
だが、この部屋の持ち主には、生理があった……。