嵐の前-3
ゴキッ……って言わなかったよな?……。
重丸の着信が、空しくタカのジーパンのポケットで鳴り続けていた時間。
タカは、まだ浴室の中。
ケガしてたら、どうしよう?……。
「コトリ……大丈夫か?」
半分とまでは、いかないけれど、アイツは、コトリの中にグッサリ。
頭の中にあったのは、股関節脱臼の不安。
コトリは、足を拡げきっていた。
股間に、うっすらと血が滲んでいる。
「痛いぃ……。」
大粒の涙をこぼして、コトリはグシグシ。
とても、それ以上なんて、出来なかった。
すぐに抜いて、コトリの無事を確かめた。
「立てるか?」
コトリが泣きながら、ゆっくりと立ち上がる。
おぼつかない足取りだったが、しっかり立った。
大丈夫そうだな……なんて思ってたら、ツルッ!ドテッ!
豪快にすっ転んだ。
大股開き♪
「もう!タカ、キライィッ!」
オレのせいじゃねえだろ!
勝手に転んだくせに……。
慌てたように、股を閉じていた。
どうやらコトリは無事らしい。
大事にならなくて一安心。
ほっ……。
「まだ、棒が挟まってるみたい……。」
まあ、確かにデカイのが、ぶっ刺さってたからね……。
コトリは、内股気味にトコトコ。
歩くのは、やっぱり辛いらしい。
お風呂から上がって、3人で着替えていた。
「ねえ、お祝いに、ご飯食べに行こうか!?」
シホは、なぜか、すごく嬉しそう。
お前、変な母親だな……。
と言うわけで、コトリの開通記念に、ファミレスへ行くことになったオレ達。
「何が食べたい?」
やさしげな瞳が、コトリを見つめていた。
シホは、浴室の中でも、泣きじゃくるコトリを、愛しそうにあやしていた。
何度も何度もキスをした。
背中を包み込まれ、やさしく抱き寄せられて、コトリはようやく、安心したように泣きやんだのだった。
「フランクフルト……。」
お前、さっき食べたじゃん……下の口で……。
さすがに、言わんかったけど。
「フランクフルト?ハンバーグじゃないの?そんなもの好きだった?」
シホが不思議そうな顔をする。
コトリが、ギロッとオレを睨んだ。
「噛みちぎりたい……。」
お、お前、もしかして、根に持ってます?……。