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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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嵐の前-2



日本全国には、約25万人の警察官がいる。

彼らは厳しい試験を突破し、警察学校での訓練を経て、各署轄へと配置されていく。

警察学校の訓練課程で、もっともきびしいのは術科訓練であろう。

銃操作技術、逮捕術に加えて、警察学校の入校間に、柔道もしくは剣道の黒帯を目指さなければならない。
警察学校によっては、その二つとも有段者にならなければならないところもある。

本来ならば1年半ないし2年をかけて修得する技術を、わずか半年から10ヶ月の間で修得しなければならないのだから、その修練の厳しさがうかがえる。
毎回、この術科訓練の厳しさに耐えかねて、途中で挫折する者が約1割程度はいる。

では、なぜ彼らは、これほど厳しい訓練をしてまで柔剣道を体得するのか?

それは無論、犯人逮捕のために必要な技術であるからに違いないのだが、もうひとつは、容疑者を拘束する際に、怪我を負わせることが出来ない、といった明確な理由があるからに他ならない。

警察官が、職務遂行のための具体的な行動の根拠として定めた警察官職務執行法には、わずか8つの条文しかない。

中でも、対処措置として規定されているのは、「質問」「保護」「非難等の措置」「犯罪の予防及び制止」「立入」「武器の使用」の6つしかなく、その武器の使用にしたところで、刑法第36条の「正当防衛」もしくは同37条の「緊急避難」の適用がなければ、それは違法となってしまう。

つまり彼らは、どんなに強力な武器で武装した凶悪犯であろうとも、自己の生命、もしくは財産に危険が及ばない限り、犯人に怪我を負わせることは出来ないのである。

それは、法律が許していないのだ。

だから、警察官は、抵抗する犯人を無傷で拘束する、といった至難の業を成立させるための特殊技術として柔剣道を習う。

日々実戦にある彼らは、警察学校を卒業してからも柔剣道の修練を欠かすことはない。

そして、特に技術に抜きん出た者は、特練員と呼ばれ、さらに技術の向上を目指すことになる。

特練員となった警察官達の技術は、もはや全国レベルにある。

重丸は、その特練員をも指導できる数少ない技術指導者であった。

「春雷重丸」と警察官からも畏怖され、大学時代は、剣道で全国を制覇したほどの腕前である。

現に彼は、この地に来て、すぐに地元警察から技術指導の要請を受けている。

それは、ここばかりでなく、以前の任地でも同じだった。

だから、重丸には、過去の赴任先であった幾つかの警察内部に、いまだに強力なパイプがある。

いったん築かれた師弟関係というものは、おいそれとは断ち切れない。

彼らは、師と仰ぐものを絶対の存在と認め、支持し、敬うからだ。

電話の相手も、重丸をいまだに「師」と仰ぎ、敬愛する人間のひとりだった。

彼がトリヤマから選ばれた理由はひとつしかない。
あの事件に関わっていたからだ。
あの頃、彼は、まだ少年課の一署員に過ぎなかった。
今は、試験にも合格して、署内の中央にいる。
これまでは、彼がいてくれたおかげで、有意義な情報を得ることができた。
だが、トリヤマが彼を切った今となっては今後の期待はできないだろう。
これ以上彼に迷惑を掛けることはできない。
気のいい男だった。
娘との仲も今のところはうまくいっているらしい。
年の差を考えれば難色を示したくもなるが、それはお互いがこれから決めていくことであり、重丸が口をはさむようなことではない。

だが、意外と似合いの夫婦になるのではないかと、重丸あたりは思っている。
娘は、再来年、大学を卒業したら、女性警察官になりたいと言っている。
反対するつもりはなかった。
むしろ、それは彼女の天職のようにも思う。
正義感が強く、初志を貫徹するだけの強い意志のある娘だった。

まさしく鉄壁の砦だな……。

重丸の脳裏に愛しい娘の顔が思い浮かべるとき、必ずもうひとつの顔も脳裏に浮かぶ。
シホの顔だ。

こっちは没落の砦か……。

娘とシホの間には、なんの関わり合いもない。
シホの存在すら、娘は知らないだろう。
重丸にしたところで、シホは、まったくの赤の他人でしかない。
だが、娘とシホの間には、奇妙な因縁がある。
その因縁が、重丸に、シホを見捨てさせない。

必ず、オレが守ってやる。

重丸の胸中は、穏やかではなかった。
如月和磨という男の性格を、いやというほど知っていた。
絶対に、このままおとなしくしているような男ではない。

アイツは、すぐに動き出す。
じっと獲物を待つような性格じゃない。
必ず、先に何か仕掛けてくる。
それは、すぐ近いはずだ……。

和磨が姿を見せないのが不気味だった。
だが、重丸にもひとつだけ救いがあった。
それは、シホとコトリのそばには、あのタカがいることだ。

何年か狭い檻の中で寝ている間に、お前も老いたってことを、思い知らせてやる。
アイツは強いぞ……。

重丸は、胸のポケットからケータイを取り出して、タカの番号をコールした。
タカに、シホたちの警護を頼んでから、すでに3日。
定期的に連絡を入れるように言わなかったせいか、まったくこの方、タカからの連絡はない。

あのバカは……。

ケータイは、空しく呼び出し音を鳴らし続けるだけで、待ち望む声は返ってこなかった。

連絡がないのは、元気な証拠か……。

重丸は、ケータイを閉じた。

タカ、頼んだぞ。
必ず、シホとコトリを守ってくれ。
アイツが、何を仕掛けてこようと、絶対にあのふたりを傷つけさせるな。

重丸は、窓の外に目を向けながら、手の中にあるケータイを握りしめた。



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