ふたりの過去-1
第13話 〜〜「ふたりの過去」〜〜
そいつは、忽然と姿を現した。
全身黒ずくめの異様な出で立ち。
ひどい優男。
だが長身痩躯の肢体からは、容易に人を近づけないだけの、威圧感のようなものが放たれている。
ただ者じゃない。
瞬時にわかった。
颯爽と階段を下りてきた。
まるで飛ぶような足取りだった。
そいつは、階段を駆け下りると、オレに対峙した。
体育館は、でかいガラス張りの近代建造物だ。
まぶしい光が外から注ぎ込んでいる。
窓を背後に取られて、逆光にヤツの姿が消える。
マズッた……。
アイツの顔が見えない。
そいつは、ゆっくりとオレに近づいてきた。
背中に聞こえる、すややかな息遣い。
圧倒的に不利な状況。
今、襲われたら、対処のしようがない。
アイツが、右手を挙げた。
どちらに逃げる。
右か?、左か?
どちらにも対処できるよう足に力を込めた。
オレの焦りをあざ笑うかのようにヤツは、口元を歪めていく、
ニヤリと笑う顔が見えた……。