〈被虐少女〉-11
『そういえば愛ちゃん主演の[御手洗花子ちゃん]て映画、出来映えも2時間ドラマ並みの低レベルだったし、観客動員数も散々だったね。それに愛ちゃんが歌った主題歌も大爆死だったしさ、なんて言うか、もう“終わってる”んだよねえ?』
『あ〜、あのブレザー姿の愛ちゃんしか観るトコ無いヤツね?映画の写真集しか売れなかったって聞いたけどな?僕も写真集だけ買って、オナニーに使ったっけ』
『なんだ、“全然ダメ”じゃないか。結局さ、芸能活動とか言って格好つけてもさ、オナニーのズリネタを提供してるだけなんだよね。オナペットとしての需要しか無い、ルックスだけの薄っぺらな“能無し”ってコトかな?』
『聞いたか?コレが〈世間の声〉ってヤツだよ。前園愛って小娘は、観てらんねえくらい棒演技で歌は下手くそで、ロリコンオヤジのザーメン搾り取るしか能が無えオナペットだって思われてんだよぉ!』
「〜〜〜ッ!!!」
幼いながらに全力で駆け抜けてきたこれまでを、愛が築き上げてきたキャリアの全てを、オヤジ達は否定した。
口元に笑みを湛えながら、しかし、蔑みの眼差しは氷のように冷たく、言葉を鋭利な刃に変えて愛をこれでもかと斬りつける。
いま浴びせられた言葉の暴力は、芸能人・前園愛としての未熟さを辛辣にあげつらった物であり、それは愛本人が抱えていた将来への不安そのものでもあった。
もう顔も上げられない。
胸に受ける痛みに言葉は詰まり、辛くて悔しくて涙が止まらない。
触れられたくなかった弱点を容赦なく突かれた愛は、一言も言い返せないままで唇を噛むしかなかったのだ。
『さあ、賞味期限が切れそうなクソアイドルが、セクシー女優デビューするぜ?余すトコなく撮ってくれよなあ?』
「うあぁッ!!もうやだよぉッ!!わ…悪口ばかり…ッ…悪口ばかり言ってッ…!!ひぐッ!えっぐッ!あ、あっち行ってよぉッ!!」
開かれた股間の前後にカメラは構えられ、そして泣き叫ぶ表情も捉えんとカメラは向けられる。
これはレイプであり、ペットとしての躾であり、苛烈な虐めであり、そして単なる見世物でもある。
『プックククッ…泣いてねえで早く言えよぉ……どんな風にオマンコを弄ってるんだあ?……今更「嫌」とか言ったら、亜季は頭のイカレたクソオヤジ共の〈餌〉にされるぜ?』
「えぐッ…ぶ…ひぃッ!ヒックッ!……ひふ…!」
こんな光景を記録される訳にはいかない……しかし、亜季をこれ以上の暴力に曝させる訳にもいかない……このまま泣きじゃくり、黙りを決め込もうにも鬼畜達の表情は不機嫌さを隠さず、引っ詰め髪の男に至っては、明らかに苛ついているのが分かった……。
「ヒッ!…ヒグッ!手で…ヒックッ!手で…つ、包んで…う…うわあぁぁ!」
この自分の声は、今の自分の言葉は全て記録される……決して口が裂けても言えない、そして死んでも他人には見せたくない姿の、その何もかもが記録されてしまう……愛は僅かだけ口にすると、声をあげて泣き出してしまった……オヤジ達からの残虐な仕打ちに、もう耐えられなくなってしまったのだ……。