赤い薔薇の秘密-3
◆
――次の水曜日。
その日は朝からどんよりと曇っていた。
「ごめんね、天道くん。私のために仕事休んでくれたの?」
「ああ。っていうか、俺も確かめたいことがあってな」
春菜は『センセーション』で修平と再び向き合っていた。
「確かめたいこと?」
春菜のその問いに修平は答えなかった。彼は無言のままいつになく険しい顔をしてテーブルのコーヒーカップを見つめていた。
「天道くん、なんでネクタイなんかしてるの?」
「今日は、」一度言葉を切った修平は少しばつが悪そうに前に座った春菜に目を向けた。「俺、学校に出勤したことになってんだ」
「え? なんで、そんな……」
「ちょっとな……」修平はカップを口に運んだ。
「夏輝に内緒で?」
「ああ……」
「どうして?」
修平はまた難しい顔をしてうつむいた。
少しの沈黙の後、修平は決心したように顔を上げた。
「春菜、今日、ケンタの行き先を突き止めようぜ」
「う、うん。ありがとう。でも天道くんも何だか、表情が冴えないようだけど……」
修平は春菜の目を見つめた。
「中学時代からの親友でもあるケンタが、妻であるおまえを差し置いて、他の女に走ることが、俺には許せねえんだ」
「そ、そうだよね……。ごめんね、天道くん」
「それに……」
「え? まだ何かあるの?」
「い、いや……」修平は言葉を濁してコーヒーカップを口に持っていった。
中身を飲み干した修平は席を立った。「俺、着替えてくる。ここで待っててくれ、春菜」
春菜はこくんとうなずいた。