マミの高揚-2
「でも、それだけじゃないんです。プロトタイプの1機を壊してしまって」
「えっ?壊れちゃったの?もしかして耐久性?それなら問題だわ」
ケイコは顔をしかめた。【O−CLUB】は、こと耐久性に関しては煩かった。
「違うのよ。ケイコおばあちゃんが失神しても全然止まらないから、あたしが変身して壊したのよ」
「なあんだ。それでマミちゃんはウルトラレディになってるのね。ウルトラレディでないと壊せない強度なら問題ないわね」
「いいんですか?1機が数千万ですよ」
「それは仕方ないじゃない。いいモノ作ろうとした結果なんだから」
沈んでいたハルマの顔が一気に輝いた。
「そんなことよりホンジョウさん、アレって強すぎるのよ。もっとジックリ責めてくれないと、あっさりイき過ぎるのよね」
「えっ?そうなんですか」
強ければ気持ちいいものと思っていたハルマには、目から鱗だった。
それよりも、ロータードローンの開発には他の重要な骨子があった。空中浮遊力と推進性のバランス維持。器機自身による震動に対する内部構造の耐久性。推進口の愛液やその他の異物に対する目詰まりの対処法。万一のメイン推進力が故障した場合のサブ推進力の機能面及び、自動修復装置の充実。対象者の識別。対象者の脳波と肉体の変化の測定による絶頂の感知など。それらは多岐に渡り、肝心の震動の強弱にまで考えは及んでいなかった。
「あの強さは盛り上がってからの、最後の一撃で欲しい強さね。それはディルドも同じよ」
「なるほど」
ハルマは早速被験者の意見を端末機に記録し始めた。真剣に意見に耳を傾けるハルマを見てケイコの表情が弛んだ。
「うふふ、ホンジョウさんって幾つなの?」
「えっ?」
突然のケイコの問いに、ハルマは戸惑った。
「じゅ、18です」
「うそっ!」
マミはハルマの予想外の若さに驚いた。今はケイコの前で大人しくしているのは仕方がないにしても、さっきまでの世界的企業のトップのミヤコの前で堂々としていた様は、とても18歳には見えなかった。
驚きのあまりマジマジと見れば、整った顔立ちに時折見せる笑みには、若い爽やかさが垣間見れた。
「まあ、若いのね。マミちゃんと同じ飛び級かしら。うふふ、でも、若いのにエッチな研究ばかりしてるのね」
「こいつは優秀だけど、入社当時からセクシー系希望なんですよ。普段から妄想の塊で、困った奴なんですよ」
3Dカメラスタッフのコンドウが口を挟んだ。その口調には若者を可愛がる韻が含まれていた。
(へえ〜、仲間に愛されてるんだ)
マミはハルマを少し見直した。
「まあ、それは頼もしいわね。でも、その割りにホンジョウさんて女性経験少ないでしょ」
普通の企業ならばセクハラになる言葉だか、【O−CLUB】のカリスマ幹部には通常のセクハラの概念は通用しない。ケイコはストレートに聞いた。
「うっ…」
図星だった。
「あ、あまり機会がなくて…」
【O−CLUB】では、今回のセクシー系の器機の開発では、それこそ被験者を募るには事欠かなかった。
しかし、卑猥でいながら凄く初なハルマは、いざ、実際の女性を前にしたときには、恥ずかしくて協力を求めることができなかったのだ。