歪曲-6
「こっちも見る?」
1冊目が終わり、チカは2冊目を指さした。
ミナは首を横に振った。
吐き気が込み上げていた。
これ以上、陰惨な写真を見たら、ほんとに戻しそうだった。
「ミナ、大丈夫?」
チカが心配そうに見つめていた。
ミナは、小さく肯いた。
「ミナも、きっと同じ目に遭うんだよ」
ミナを心底心配しているような顔だった。
ミナは、チカに目を向けた。
不安な眼差しで、チカを見た。
タケルが同じ事をするとは思えない。
ミナを大事にしてくれて、いつもやさしく笑いかけてくれる。
確かにいやらしいことはされるし、意地悪もされるけれど、でも、タケルがこんな酷いことをするようになるなんて思いたくない。
「そんなこと……お兄ちゃんはしないよ……」
必死に違うと思いたかった。
だが、チカに訴える声は、あまりにも弱くて小さかった。
夕べのタケルは、怖かった。
お風呂のなかで、おチンチンを口できれいにしろと、迫られた。
ミナは、怖くて嫌だと泣いた。
大きくなったおチンチンは、本当に禍々しくて不気味だった。
タケルは、ミナの体を持ち上げた。
口できれいにしないなら、ミナのアソコで洗わせるといった。
膝の裏を持たれて、押しつけられた。
何度も何度も、ミナのアソコに滑らせた。
先の尖ったおチンチンが、本当に入ってきそうで、怖くて怖くてずっと泣いていた。
タケルは、ミナがおチンチンを舐めるまで、許してくれなかった。
結局、最後は舐めさせられた。
あのまま嫌だといっていたら、タケルは本当に入れたのだろうか。
アルバムのなかのチカのように、ミナを串刺しにしていたのだろうか。
そして、今度は……ミナを縛って、入れるようになるのだろうか……。
「入るのかな……」
脳裏に描いていた不安が、思わず口に出た。
今にも、泣き出しそうになっていた。
「ミナ、裸になりなよ」
悲しげにうつむかせるミナの顔を、横から心配そうに眺めていたチカが唐突にいった
「え?」
「確かめてあげるから、裸になりな」
「え、確かめるって、なにを?」
「あんたが壊れないかどうかをさ」
チカは、じっとミナを見つめていた。
その瞳には、有無をいわせない力があった。
「でも……」
女同士とはいえ、さすがに恥ずかしい。
「わたしは、あんたのためを思っていってるんだ」
「だって……」
「確かめるだけだよ。早く、裸になりな」
いったと思ったら、いきなり自分の服を脱ぎだした。
「あんただけじゃ、恥ずかしいだろうから、わたしも裸になってあげるよ」
さっき着替えたばかりのキャミソールのすそをめくり上げて、いきなり頭から脱いでしまうと、あっさりと下着だけの姿になってしまう。
肩紐の細い子供用のブラキャミも同じように脱いでしまい、最後に大人びたショーツもするりとお尻から剥がしてしまうと、一糸まとわぬ生まれたままの姿になってミナを見つめてきた。
「これで、あんたも恥ずかしくないだろ?」
まったく恥ずかしがる素振りも見せず、それどころか、アソコさえも平気でさらすチカの裸は、とてもきれいだった。
所々に擦過傷のようなほそい痣があるものの、肌は透き通るほどきれいで、ミナよりも胸が少しだけ膨らんでいた。
まだ、似たような円錐状の歪な乳房には違いなかったが、膨らみはミナよりも豊かで、もうすぐ彼女が「女」になっていくのを匂わせる。
お尻の大きさは、たいしてミナと変わらないのに、その上の背中が極端にくびれて反り返り、それが、ひどく猥雑に目に映ってならなかった。
お尻にも、ほそいスジは幾つもあり、それが打たれてできたものであることはミナにも容易に想像がついた。
同じようなスジは背中にもあって、チカのきれいな肌に虫の這ったような傷痕を残していた。
チカは、健康診断やプール授業がある日は必ず欠席して、夏真っ盛りの炎天下でも、肌が弱いことを理由に長袖の運動服で体育の授業を受けていた。
着替えもいつも最後で、人前で肌を露出させることはほとんどなく、夏といえどもスカートを穿いているときは、決まって長いスパッツを穿いていた。
その暑苦しい服装が不評を買って、チカはクラスのなかでますます孤立を深めていくことになったのだが、それには理由があったのだ。
これがその理由だったのかもしれないと理解して、ミナは少しだけ暗い気持ちになった。
「ほら、あんたも早く脱いじゃって」
だが、当の本人はまったく気にしていないらしく、自分の肌に残された爪痕を気に病む様子もなかった。
「あ!待って!待って!チカちゃん、待って!」
気に病むどころか、ひと様のシャツを奪いにかかっていた。
長袖のシャツを重ね着のTシャツごとあっさりと奪われて、上は肌着一枚にされてしまった。
「じ、自分で脱ぐから!い、いいよ……」
今にも襲いかかってきそうなチカの勢いに気おされて、慌ててミナは白旗を揚げた。
チカが裸になったからといって、なにも恥ずかしさが消えるわけではない。
戸惑いを表すかのように、一枚一枚、服を脱いでいくにも時間がかかった。
気の短いチカが、文句も言わずに見つめていた。
大人びていたチカの下着とは違い、ミナが身につけていたのは、子どもらしい肌着に子どもらしいパンツ。
そのふたつも躊躇いながら脱いでしまうと、ミナはチカと同じように一糸まとわぬ生まれたままの姿になった。