理由-1
12
タケルは、目を閉じていた。
ひどく穏やかな表情をしている。
悪鬼の顔はすっかり消えて、少年の顔に戻っている。
眼下に、ミナの顔がある。
首の下に腕を入れて、小さな頭を抱えていた。
舌を長く伸ばしていた。
その舌をミナが一生懸命に舐めている。
タケルとは対照的に、ミナは辛そうに目を閉じていた。
顔は、涙に濡れたままである。
はあはあ、と繰り返す吐息が荒い。
両手はタオルで結ばれ、上へと伸ばされていた。
下肢は、両の膝を畳むように折られ、戻すことができないように、ズボンのベルトで締められている。
解剖されるカエルの姿に似ていた。
服は着ていなかった。
白いパンツだけが残されていた。
おへそまで隠れる厚手の下着は、股のところがこんもりと盛り上がっていた。
タケルの手が入っているのだった。
厚い陰門を割って指が埋められていた。
指は、膣の中にまで潜り込んでいた。
ゆっくりと出し入れされた。
ときおり、深く入ってきて、ミナは絶息するかのような声を漏らした。
鈍い痛みがあった。
痛みを堪えながら、ミナは一生懸命にタケルの舌を舐めた。
なにをいわれたわけでもない。
タケルは舌を入れているだけだ。
口の中で乱暴に暴れさせもしなければ、唇を塞ぎもしない。
ただ、長く伸ばした舌を、ミナに舐めさせている。
穏やかに目を閉じていた。
やさしい顔に戻っていた。
ミナは、どんなに苦しくてもやめるつもりはなかった。
はあはあ、と息を荒げながら、一生懸命にタケルの舌を舐めつづけた。
タケルの部屋のなかだった。
リビングで捕らえたミナを、タケルは自分の部屋へと連れて帰った。
両手を差し出しながら、覚悟を決めたように項垂れるミナの細い脚を腕に抱えて肩に担ぎ上げ、まるで荷物でも運ぶように背負いながら、2階へと向かう階段を上ってきた。
太い腕に両脚をもたれ、肩に担がれて運ばれるミナは、背中で、ごめんなさい、許してと、か細い声を出して泣くしかできなかった。
部屋に入ると、乱暴にベッドに放り投げられた。
それから灯りを落として、タケルは自分だけ裸になった。
皎々とした蛍光灯の明るさではなく、小さな豆電球の薄明かりを選んだのは、ミナを心底怖がらせるためだ。
目をこらさなければ、はっきりと物のみえない世界は、わずかながらも、ひとに恐怖を与える。
現にミナは、タケルが灯りを落とすと、過酷な試練がこれから始まるのを悟った。
顔が引きつった。
脅えた眼差しを向けるだけで、声も出せないでいるミナの前に、隆々とそびえ立つペニスを見せつけるようにタケルは仁王立ちになった。
タケルがどれだけ怒っているかを教えているかのようだった。
天を突くほどにいきり立っていた肉塊は、それがミナに苛烈な仕置きを与えるための道具であることをはっきりとわからせた。
ミナは、目の前に突き出されたものを脅えた瞳で見つめ、それから、救いを求めるような眼差しをタケルに向けた……。