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ある感情の軌跡
【純愛 恋愛小説】

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ある感情の軌跡@-1

綾香が死んだ。

それは俺が16回目の夏を数えた日だった。

初めてデートにいった桜祭り、あの夜桜がすごく似合う、俺に初めて出来た恋人。愛していたのか?まだキスもしてない、それが恋なのかすらわからない、手を繋ぐだけでも戸惑うばかりの、そんな駆け出しの青春の日々のある夕方、俺の最初の恋人、吉村綾香の死を告げられた。



――――――――――


『吉村さんから手紙預かってるの。読んで』
丸山は静かにそう言うと薄っぺらい封筒を差し出した。


そこには自分が呼吸器の重大な病気だということ、俺との想い出、そして感謝と、これから自殺する旨が書かれていた


一瞬頭が働かなくなった。
『なに?遺書?ならなんで、普通親から直接渡したり…あれ、連絡してくるもんだろ?』

冷静にゆっくりと、でも、自分でも分かる、目と瞳孔を見開いて威嚇するように彼女に問いつめる

『先週吉村さんに呼び出されてね。一週間後の午後6時にここでタカが待っていてくれるはずだから、お願いって。後は何も知らないの』

ため息混じりに、目を伏せた彼女は言った。

タカとは俺のこと。宮森鷹靖、タカヤスだから友達は皆タカと呼ぶ。
たしかに今日は綾香に会いに来た。4日前に約束して。
そしたら綾香ではなく丸山がいて…
…何かがおかしい。と違和感を感じながらも俺はふいに虚脱感に襲われる。

それ以上その場に居たくなくなった俺は適当な挨拶をして一人図書館から飛び出した。

俺と綾香が出会った場所。
携帯を持っていない綾香との待ち合わせ場所。

そこは俺の高校と彼女の高校のちょうど中間くらいにあって、官僚を目指し始めた俺は高校受験の時から毎日通っている。
今日この図書館で俺を待っているはずだった可愛い女性は、紙になっていた。

いたたまれなくなり自転車に猛スピードの力を込め、湖を目指す。

一人になりたい時の隠れ家だ。


気が付いた時には隠れ家に横たわっていた。
少しづつ息を整える。
ポケットから携帯を取り出すと画面は8時を告げている。
それに溜め息一つかけて電源を切った。


深く深呼吸をしてからもう一度、そして何度も手紙を読み返す。
そして考えた。思い出した。
前に沢山薬を持ってるのをみた。
彼女は、確かに体が弱かったかもしれない。
死んだのが本当でも嘘でも手紙にしたのは直接には言えなかったんだろう。
死んだのが本当ならなんで自殺なんかしたんだ!?原因は病気か?死んだのが嘘ならなぜそんな嘘をつくんだ?別れたかったのか?そうだ!もし本当に死んだなら綾香の親から連絡くらい…


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