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想い出のアルバム
【近親相姦 官能小説】

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想い出のアルバム-2

(2)

 わずかな時間のうちに勲叔父さんの存在は私の中で大きなものになっていった。
いつでも話を聞いてくれる。両親のようにうわの空で聞き流すのではなく、真剣に向き合ってくれる。一人っ子の私にとってそれがどれほど嬉しいことだったか。家に話し相手がいる。友達のように、兄妹のように、あるいは……私は叔父さんを、(叔父)よりもっと身近に感じようとしていたのかもしれない。それがどんな存在をイメージしていたのか、その時の私に明確な思慮はなかった。ただ、寄り添うと応えてくれる人がそばにいる……そんな漠然としたものだった。

 叔父さんはカメラが趣味だった。持っているカメラ、機材はかなり高価なものらしく、父に言わせると、
「道具はプロ並み」
小さいものからずしりと重いカメラまで何台もあった。レンズも何種類も持っていた。
「見てごらん」
三脚を立てた長い望遠レンズを覗いて驚いた。2階から中庭に咲く小さな花びらの露の滴が画面いっぱいに光り輝いていた。
「わあ!きれい!」
目の前で見ているみたいだった。

「真弓ちゃん、写真撮ってあげる」
初めてカメラを向けられた時の一瞬のときめきは忘れられない。
(叔父さんが私を見てる……)
写真を撮るという何でもない行為に緊張したのを憶えている。
「窓のほうを向いてちょっと顎を上げてごらん」
「こんどは顔だけ振り返って。そうそう、いいよ」
笑顔で頷く叔父さんに言われるまま様々なポーズをとった。
「いい表情だよ。真弓ちゃんは可愛いね」
 いったい何枚くらい撮っただろう。何十枚、いやもっと多かったかもしれない。いつしかモデルになったような嬉しさと陶酔感を感じていた。
「写真って、瞬間のものなんだ。連写しても厳密には同じものはない。世界でたった1枚の写真なんだよ」
叔父さんがだんだん真剣になってきて、私はそのペースに引き込まれていった。

 家族の写真もたくさん撮ってもらった。ほとんどが日常のさりげない一コマである。みんなで食事をしているところだったり、テレビを観て笑っている様子など、ふだん写真を撮ることのあまりない場面が多かった。
「こういう生活のちょっとした光景がいいんだよ」
人物だけでなくテレビや冷蔵庫などの家電も写した。
「10年もしたらデザインも変わって懐かしく思うよ。記念写真ばかりが想い出じゃないよ」
たしかに自分が小さい頃の写真は何かのイベントや区切りの時のものばかりで他のことは思い出せない。
 写真は翌日にはプリントにしてくれた。高性能のプリンターで写真屋と変わらない美しさだった。
「アルバムにしておくと大人になっていい想い出になるよ」
「うん」
「これからもっと撮ってあげる。毎日毎日が1度きり。写真はその都度自分が生きてきた証しだ。その積み重ねが想い出となるんだ。ぼくが真弓ちゃんの想い出のアルバムを作ってあげる」
「うん」
真面目な顔の叔父さんの目がかすかに光ったように思えた。

 ふと気がつくと叔父さんが私を見ていることがあった。中庭で友達と遊んでいると、気配を感じ、見上げると2階からカメラが覗いていた。
「友達と並んでごらん」
「写真撮ってくれるって」
「撮って、撮って」
Vサインをしてみんなではしゃいだ。
 学校帰りに出会ったこともある。
「真弓ちゃんの制服姿を撮ってなかったんだ。これは外せないからね」
静かなところがいいというので近くの草原に行った。
「横になってみようか」
言われるまま仰向けになると同時にシャッターの音がして立て続けに鳴った。
「上を向いてて、そのまま、そのまま」
青草のにおいが私を包んでいた。
「真弓ちゃん、膝を抱えて横向きになってくれる?」
寝た格好で写真を撮ったのは初めてである。
「動かないでね」
シャッターが降り注ぐように切られた。
 それからも、胸を突き出す格好や、うつ伏せからお尻を持ち上げた姿勢など、叔父さんの要求は続いた。
 ようやく起き上がった時、私は頭がぼうっとする感覚に見舞われて目を閉じた。たちくらみのような感じだがそれとはちがうものだった。
「どうしたの?」
「ううん……」
空ばかり見ていたからかもしれない。
「真弓ちゃん、笑って」
叔父さんの顔は火照っていた。

 その後、叔父さんは仕事に復帰したものの、半年ほどで退職した。やはり精神的に難しかったようだ。そしてほどなく我が家から遠くない私立高校の英語の講師となった。父の母校である。父は同窓会の役員をしていて、その繋がりによるものだった。
「ちょうど欠員があったんだ。うまくいけば正規採用になるかもしれない」
「勲さんは仕事で外国で暮らしていたんだから、本場仕込みよね」
「兄さん、義姉さん、うまくやっていけそうな気がします」
2学期から教壇に立つという。7月末のことである。
「でも、授業したことないんだろう?」
「教育実習しか経験はないけど、不安より気持ちの張りがある。お世話になりました」
 叔父さんはアパートに移り住むことになった。我が家から電車で2駅、自転車でも行ける距離である。
「ここから通ったっていいんだぞ。お前の家でもあるんだから」
「いい歳だから独り立ちしないと」
叔父さんは言ったが、母に気を遣っているのだと私は思った。
 結局、週末だけ我が家に来ることになったのは、食事が偏るという母の一言からだった。
「そうしろ。土曜日だけでもバランスのとれた家庭料理を食べたほうがいい」
「あら、あたし責任重大」
「それじゃ、またお世話になります」
明るい笑いに包まれて私はほっとしていた。 


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