架空な現実-1
僕、遠近(とおちか)ナツオが、高校で隣のクラスの笹舟ユウヤを知る事になったのは、ショッピングセンターの書店でよく姿を見かけたからだった。
書店の片隅の、古書を扱う書棚の前で、お互い文学全集のバラ売りをよく漁っていたから意識するようになった。
「俺の家、この上なんや。来えへんか?」
ユウヤの家はセンターの上のマンションだった。24時間管理人のいるゲートを通って4階にあがると、ユウヤの住む家があった。
「すごい…」
ユウヤの家の中には大きな書棚があって、さまざまな文芸書がつまっていた。それは父親の蔵書ということだったが、何度かユウヤの家を訪ねるうちに、古い詩集の初版の復刻版の各ページを撮影することを許してもらった。
その日もユウヤの部屋で、詩集をていねいに開いて1ページずつスマホで撮影して、ようやく奥付けまで達した時だった。
「遠近くん…… 」
ユウヤの声がした。
「ありがとう。」僕が顔をあげると、そこに服を着替えたユウヤが立っていた。
ユウヤは可愛いピンクのワンピースを着ていた。
だけど、ぜんぜん似合ってないんだ。
正直、一目みて吹き出しそうになった。それをごまかすために僕は、勢いよく立ってユウヤに抱きつくと、ベッドに押し倒した。
僕はユウヤを笑い者にしたくなかった。女装が似合わないことは、ユウヤ自身が一番よくわかってるはずだ。それをあえて僕に見せてくれたんだから。
僕はユウヤの首筋に頬を押し当てて言った。
「君は…… なんて名前やのん?」
「え……?」
「なんて名前の、"女の子"やのん?」
「わ… 私は『シオリ』…… 」
「シオリちゃん… 可愛いよ。」
僕はシオリを名乗るユウヤを抱きしめた。するとユウヤは、
「ユ… ユウヤくん。」
と言って僕を抱きしめて来た。
僕は瞬時に察した。ユウヤは「シオリ」に恋してるんだ。そして自分がシオリになりきる事で、その願いを叶えようとしているんだ。
僕はユウヤになりきって、「シオリ」の胸をなでまわした。もちろんゴツゴツした男の胸だ。だけどユウヤはせつない吐息をもらしている。そんなユウヤの耳もとにささやいた。
「シオリ…… 大好きだよ。」
ユウヤは僕に
「ユウヤくん…… シオリもユウヤくんが大好きよ…… 」
と言った。たぶんユウヤ自身が、「シオリ」に言ってもらいたいんだろうなぁ、と思いながら僕は、ユウヤのワンピースの下に手を入れ、股間をさぐってみた。
「あれ、シオリちゃん… おチNチンが固くなってるよ。」