架空な現実-3
それから数日したある日、僕が学校に行くと隣の教室に誰もいなくてドアがロックされてた。
(体育とかでもないのに、なんでや?)と思いながら自分の教室に入ると、ウチのクラスの連中も重苦しい顔をしていた。
(なんや、僕の知らんうちに何があったんや…… )僕が席につくと、
「お早う!」
ヒロくんが声をかけて来た。別にいつもと変わりない。僕はヒロくんに聞いた。
「みんな… どないしたん?」
ヒロくんは僕に顔を寄せて言った。
「知らんのん?昨日ウチのクラスの土山くんと、隣のクラスの笹舟くんとがケンカして、土山くんが大ケガしよったんや。」
「ええッ!」
「なんでも土山くんが笹舟くんの家に行ったら、笹舟くんが女の子のカッコして見せて、土山くんが笑ったらゴツいキレたらしいんや。」
「……… そんな事が……… 」
「そやから隣のクラス、いまみんな講堂で説明受けとるんやて。」
土山くんは数日して学校にきたが、ユウヤは学校に来なくなった。メールを送信すると、英語のエラーメッセージが返されるようになった。
学校帰りには書店をのぞいて見る。もしかしたら来ているかも知れない……
しかし、毎回空振りだった。
心がむなしくなる一方で、僕の心には憤りがわき起こる。
「ユウヤの野郎、僕以外の男があんな女装を見て、『可愛い』なんて言うてくれるとでも思とったんかいや!」
その憤りのたびに僕はスマホを操作して、設定画面を表示させた。
……………
【笹舟ユウヤ】に関するデータを
すべて消去します。よろしいですか?
[いいえ][はい]
……………
だけど僕には[はい]が押せない、ユウヤへのいとおしさのカケラが残っていた。
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この話は、ここまででございます。