〈写真集・1412〉-6
『亜季ちゃん、たくさんの人が集まってくれたけど、今の気持ちはどうかな?』
毒にも薬にもならないトークは、この手のイベントにはよくあるものだ。
亜季は相変わらず足をブラブラさせながら、マイクを口に寄せた。
「う〜ん……亜季のパパみたいな人ばかりでえ、なんかあ、父兄参観みたい」
「キャハ!ま〜た亜季ったらそんなコト言う〜」
確かにこのイベントに参加している連中といえば、いい年をしたオヤジばかりだ。
亜季の言葉は実に素直な感想ではあるのだが、オヤジ達からすれば、なんとも“痛い”言葉であった。
(父兄参観だあ?クソ生意気なガキだぜ……)
首謀者の股間は、亜季の心無い言葉にムクムクと膨れた。
そして、それを諌めもしないでケラケラと笑う愛に、憎しみのような欲情を高ぶらせていた。
「あのねえ、お姉ちゃんと一緒の制服が着れたのがねえ、亜季は嬉しかったの」
「でも中学生と小学生が同じ制服ってあり得なくない?ちょっと変かなって思った」
無邪気といえばそれまでだが、どうも姉妹の話す言葉というのが、首謀者には勘に触るものがあった。
亜季の舌ったらずで伸ばした言い方は、「私って可愛いでしょ?」と媚びているように感じられたし、愛の無遠慮でぶっきらぼうとも思える発言は、「自分は人気者」という傲慢さが感じられた。
「なんか変な体操服……ブルマーとか着させられて恥ずかしかった。水着がNGだからってさ、なにもあんなの着せなくたってさあ……」
「あれってお尻の形が分かっちゃうからあ、亜季もちょっといやだったなあ」
『……おい、愛と亜季って、あんなヤツらだったのか?』
『そうだよ?毒舌の小悪魔キャラだって、みんな知ってるはずだけど?常識だよ、そんなの』
聞いた方が馬鹿だったと一人愚痴たが、元より少女には愛情ではなく憎しみを抱く首謀者である。
あの大人すら嘗めてかかるような態度は、言ってみれば極めて理想的でもある。
(へッ…せいぜい今だけは好きにしてりゃあイイさ。あと何日かしたら、我が儘も言えなくなるんだからな……)
このイベントが終わると同時に、前園姉妹の拉致計画は実行される。
そんなにすんなりと事が運ぶとは思えないが、間違いなく姉妹は監禁されるのだ。