B:4-6
「燃えてたねぇー」
「まあな」
「俺は、対象は痛めつけてこそだと思うんだけど」
「いや、あれでいい。今の彼女は、俺が死ねと言ったら迷わず言う通りにす死ぬだろう」
「ほんと、人を支配するのが好きだねぇ」
「好きなものを得るためには努力は惜しまんのさ。それでも、半分は薬のおかげだな」
「そりゃどーも」
Bは彼の思い描いた理想をついに現実のものとした。彼は人を恐怖で縛るようなことはしない。もちろん、調教の一環として暴力を用いることもあるが、あくまでそれは必要だから行うのであって、Aの様に暴力自体に魅せられているわけではない。反面、Aが嫌う薬物を彼は好んで用いている。A曰く“邪道”とのことだったが、Bにしてみれば、使用するだけで精神をあらかた支配できる素晴らしいものであった。Aの方も、きちんと依頼した薬物を持ってきてくれる辺りに、ある一定の理解はあるようだったが。
「亜里沙はもう壊しはじめていいぞ。俺はあと一、二回使えればいいや」
「飽きるのはやっ」
「まあ、目的は果たしたしな。次の品を探さなきゃ」
「毎回毎回下準備ご苦労様です」
Aは隣でハンドルを握る親友に拝むような恰好で謝意を述べる。
ことの実行自体は基本二人で行うが、そのための下準備はすべてBが行っていた。目標は、彼の不動産屋が持つ顧客リストから選ばれるからだ。その顧客リストの中から気に入った少女を選び出し、入念な下調べを行ったうえで、拉致は実行される。Bが居なければ、Aは少女を嬲り物にするという凶行に及ぶことはできないのだ。
一方のBも、Aの会社で製造される薬物や、器具に依存するところが大きい。性的欲求を満たすために、Aは必要不可欠な存在だった。
「本当に潰すぞ? いいのか?」
冷静な口調でありながらも、Aはその中に喜の感情を滲ませて確認する。
「俺の目的は達成した。あとはお前の好きにしろ」
「いやっほぉーう!」
Bの光の無い眼にもう亜里沙は映らない。映るのは、悲惨な運命が確定したただのかわいそうな他人の少女だった。