第七章-2
「まず頭にシャンプーをかけるわよ」
(あ、シャンプーを使ってくれるの)
私は少しほっとして嬉しくなった。が、それも束の間。私は泉美の家に来てから八回おしっこをしていて、洗面器にたまったその八回分のおしっこを、泉美はいきなり私の頭にざぶんとかけたのだ。
(うう、臭い! なんてことを)
「これが奴隷のシャンプーだ。数学のお勉強の世界では聖水っていうんだ。ほんとはご主人様の聖水をかけるのが正道なんだけど、私はお前と違って、こんな所でおしっこをするようなはしたない女じゃないから、今回はお前のおしっこで間に合わせておくよ」
それから泉美は刷毛で私の髪をぐしゃぐしゃにかき回した。私はショートボブにさせられてからも髪は大切に手入れしてきた。その大事な髪が、おしっこと車のタイヤの泥とで台無しにされるのは惨めだった。しかしその惨めさにまた体が熱く疼いてきたりもした。
体はホースで冷水をかけながら刷毛でごしごしと擦られた。体に付着していた赤い蝋燭の蝋もすべて落としてくれた。刷毛が硬く、肌がひりひりとして痛かった。特に足を開かされて股間をごしごしやられた時は、思わずマンコが感じてしまったくらいだ。
夕食はチキンの照り焼き、それにレタスとブロッコリー、そして白飯だった。昼食と同じように、私の分は床の上に直に置かれ、私は四つ這いのまま口だけで食べさせられた。
ただ、手を使わなくても食べやすいようにと、チキンは細かく刻んでくれてあった。このあたりに泉美のさりげない愛情が感じられるからこそ、厳しい数学のお勉強にも耐えられるのだろう。
「じゃ、そろそろお前を今夜の居場所に連れて行こう」
窓の外がすっかり暗くなった頃、泉美が言い出した。そして私を四つ這いのまま歩かせ、首輪の鎖を引っ張ってドアの外へ出ようとする。
「ちょっと待ってください。全裸で首輪をつけて四つ這い、こんな格好のまま外に出るのですか」
「そうだよ」
泉美はこともなげに言う。
「誰かに見られたらやばいんじゃないですか」
「これだけ暗くっちゃ大丈夫だよ。遠くから見たら、犬の散歩をさせているようにしか見えないよ」
(そんなあ)
泉美は簡単に言うが、私は口がからからに乾くほどに緊張した。特にエレベーターのドアが開く時。もし人が乗っていたら。
しかし乗る時も下りる時も、開くドアの向こう側に誰もいなくて、ほっとひと息。
私が連れて行かれたのは、このマンションのごみ集積場だった。
「明日の朝、ごみの収集があるから、今夜はたくさん出てるだろう」
確かにたくさんのごみ袋がうず高く積まれていた。泉美はそれを素早くかき分けて、片隅にちょっとしたスペースを作った。そしてそのスペースを指差して私に言う。
「もう四つ這いはやめていいから、ちょっとここにお尻を下ろして座れ」
私は言われたとおりにした。すると泉美は私の両手を後ろ手にして縄で縛り、さらに両足首も縄で縛った。そして私の体を押して隅に持って行く。このごみ集積場は、コの字型に下の方がコンクリートの壁、その上が鉄の網で囲まれていた。私の体はそのコンクリートの隅に押しつけられ、ちょうど首のあたりにコンクリートと鉄網との境が来た。泉美はこの鉄網の一番下の部分に、私の首輪の鎖を括り付けて固定した。