情けはいらない…-6
心にクイが残りつつ、シーンとした自室で考え込む私。
風馬…君。
まさかそこまで私に好意を寄せていた…だなんて。
そう思いに耽っているとケータイが鳴る。
「あら、佐伯君から。」
彼からのメールだ。
大丈夫か?今朝は大変だったね。けど安心して、あの調子ならもう君に嫌がらせをする
とは思えないから。
私を気遣う文章。
ただ、終わった事は気にしても仕方がないと思う。
えっ、どういう事?。メールはそこで終わっている。
私は更にモヤモヤしてしまう。
「おーいっ!若葉ぁーお客さーん。」
「えっ、はーい!」
1階から響く祖父の声、ちなみに年明け初売りは無事に終わったそうだ。
階段を降りつつ来訪者を予想する。
風馬君か?幾らもう戦意喪失したとはいえ、やっぱりここには来てほしくない。それなら
巴ちゃんだろうか?でも約束とかしてないし、なら佐伯君だろうか?でもさっきメールを
貰ったし。
「お待たせ致しましたぁー。」
誰だか分からないので礼儀正しく振舞う私、するとそこには。
「あっ!若葉さんですかっ?あの…。」
「え…は、はい…そう、ですけど。」
店に待ち構えていたのは風馬君でも巴ちゃんでもない、かと言って佐伯君でもない。
今までに見た事もない私と同年代くらいの女の子だ。
その子は愛想よくニコニコと華やかな感じで私を見つめる。背は私と同じくらいで髪も
私より短くまん丸い感じで、うちと同じ制服を身にまとっている。
「あの、私と同じ学校の子…ですよね。」
「はい!あっ、申し遅れました私、稲葉明日香って言います!高校一年美術部。」
稲葉…さん、知らないなぁ、巴ちゃんや佐伯君からもそういった名前聞かないし。
だけど、美術部…って、まさか。
「それってもしかして風馬君と。」
「ええっ、だから唐突にお願いします。」
「…。」
「彼、風馬君と別れて下さい!」
え…
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
何なの、この子っ!!?
次回、21話に続く。