是奈でゲンキッ!X 『ミステイクス リンク』-2
「後はぁ、これに可愛くトッピングして、綺麗にラッピングを掛ければ出来上がりっと」
「ちょっとっ! あんたはもういいから、あっちへ行ってなさいよ!」
是奈は、勝手に必要以上に事を進めてしまおうとする妹の額に手を当て、あんたは邪魔よとばかりに、清美を押しのけると。手作りチョレートの続きをやろうと、妹の持っていた飾り用の、色付きマーブルチョコを慌てて引っ手くる。
清美は、「お姉ちゃんってば酷ーい! あたしもやるー!!」とばかりにしゃしゃり出るも。
「あ〜もぉーうっ! あんたってば邪魔よ!!」とばかりに、是奈に背負っていたキリンのぬいぐるみを鷲掴みにされ、それを ”ボイッ”っと、廊下の方へと放り投げられてしまった。
清美の一番お気に入りのぬいぐるみであり、家にいる時はいつも彼女と一緒と言う、大切な品である。
「あ〜んっ! あたしの『キーくん』っ! なんて事するんだ馬鹿お姉ぇーーっ!!」
清美は慌ててぬいぐみを拾い上げると、べそをかきながら、是奈に文句を言う。
是奈は、上手いこと清美をキッチンから追い出せたと、苦笑いしながらキッチンの扉を閉めて、妹が入って来れない様にと、扉を手で押さえてブロックしていた。
清美はしばらくの間「入れてょー!」と、扉を引っ張たり、叩いたりしていたが。
そのうち諦めたのか、
「バカお姉ぇーー! お前なんか彼氏に振られちゃえーー!!」
そんなことを叫びながら、そのままどこかへ行ってしまったようである。
是奈は、やれやれ、やっとうるさいのが居なくなった! と、額の汗を手で拭いながら、ほっと一息ついて。手作りチョレートの続きをやるべく、テーブルの前へと足を運んだ。
「ところで…… この後どうしたらいいんだっけ?」
妹が居なくなった途端、これである。
なんとも不甲斐ない、姉であった。
〜〜〜〜〜〜
「それじゃっ、また明日な!」
「バーイッ!」
ゲーセンの前で友達と別れ、嘉幸(よしゆき)は相棒の白いマウンテンバイクに跨ると、少し暮れかかった町並みを後に、自宅へと帰還するべく、颯爽と走り出した。
もう晩秋だと言うのに、顔を撫でて通り過ぎる風の感触は、まるで夏のなごりでも有るかの様で、暑くも感じる。
嘉幸の自宅は、ここ『藤見晴市』の繁華街から少し離れた新興住宅地にある。市内でも少し小高くなった丘を切り開いて出来た、閑静な住宅地であった。
嘉幸はそんな自宅へ帰るべく、軽快にマウンテンバイクを飛ばした。
丁度、繁華街と自宅との中間点ぐらいだろうか、市内のほぼ真ん中に有る『藤見晴市グリーンサンクチュアリ公園』
なる大きな公園にさしかかると、いつもの事ながら近道をするべく、公園を横切ろうと大きな公園入り口のアーチを潜って、相棒の白いマウンテンバイクを公園の敷地内へと滑り込ませた。
遊歩道にサイクリングロード、大きな噴水に芝生に花壇と、市内でも一番大きな公園と相まって、訪れている人達も多かった。
嘉幸は人混みを避けるように、ゆっくりと噴水の有る中央広場を通り抜けると、反対側の公園出口へと向かうべく、芝生の周りに敷設されたサイクリングロードをまた、軽快に走り始めた。
遊歩道と兼用のサイクリングロードであるが、さすがにここは人通りも少ないようである。