ハッピーイルミネーション-3
「混んでる…なぁ。」
絶えず会場からはうっとおしいほどの賑やかな笑い声を耳にする。
僕は全てを失ったようなとても闇に等しい程に暗い顔で、両手の平に瞳を落とす。
「もうっ!本当にいい加減にしてよ。」
「佐伯君っ!しっかりして、死んじゃ嫌だよっ!!」
彼女に鬼の形相で避難され、そして顔を血で滲んだ様にも見える泣き顔、その横顔の視線の先はあの彼に向けられていた、決して僕ではない。
こんな筈じゃ…なかった。本当は誰かを巻き込む事も、彼を刺すつもり何て。
僕はただ彼女に振り向いて欲しくて、昔のように…、僕に天使のような笑顔を見せてくれたら…。なのに実際に見たのは大好きな人が死んでしまうかも知れないあの泣き顔。
今でも、悪夢のように思い返してしまう、あんな彼女は見たくもなかった…。けどそうなるようにしたのは紛れもなく僕自身のせいだ。僕が嫉妬に狂って…。
彼を刺して、彼女の滝のような涙を目の当たりにしてようやく目が覚めた気がした。
確か、アイツが今度若葉ちゃんとここに行こうって…。
……いやいやまさかな、そんな筈は。
部屋に引き籠るのも耐えれなくなって、出掛ける当てもなく無意識のうちにここへ足を
運び、もう一度彼女に会えるのでは…と、淡い期待を抱く。会えた所で何だと言うのだろうか…、若葉ちゃんにせよアイツにせよ、僕を許す筈がない。
諦めて会場に背を向けると。
「いだだだだぁ、なーんで背中の痛みがまた。」
「無茶してスケートリンクではしゃぎ回るからだよー。」
!!
聞き覚えのある声に振り向くと
「若葉…ちゃん。」
間違いない、あれは…。