宿屋にて-1
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――宿の寝台に着くなり、ファルチェは膝立ちになってリロイの首に抱きつき、唇を合わせる。
中途半端に味わったら、余計に我慢が出来なくなった。
飢えを満たす時の副作用で、体中が火照りはじめ、脚の付け根がジンジンと疼いてくる。
もどかしくて身体を擦りつけると、マントがはだけて裸身がリロイの服に触れる。
尖った胸の頂が上着に擦れると、チリリとむず痒いような快楽が走り、胸の芯から腹の奥まで駆け巡っていく。
ここの宿はかなり上等で、寝台は広く敷布も清潔だ。備え付けの風呂も、シャワーまで完備していたけれど、もう先に湯を使う余裕なんかない。
ただもう、早く欲しくてたまらない。
心が、喰いたくてたまらないと叫んでいる。
「そんなに焦らなくても良いから」
リロイがファルチェの手を首から引き剥がし、寝台へ仰向けに押し付ける。
そしてファルチェの上に跨り、胸元を押さえて動けないようにしながら、片手で自分の覆面と上着を取り払った。
「それに、たくさん可愛がるのも約束しただろ?」
覆いかぶさってきたリロイに、頬へ音をたててキスされた。
「そっちはいらない!」
頭にきて、ファルチェは唸る。
ほっぺたにキスされても、唾液を飲めないからまるで意味がないのに。
これで飢えが満たせるのは、リロイがかけた『服従の呪い』により、主人に尽くした報いを貰えるという形で、ファルチェの心が満足しているからだそうだ。
リロイは、これではいつまでも本当には満たされないと言うけれど、ファルチェは未だに、自分が本当は何に飢えているのか解らないから、一時しのぎだって上等だ。
それなのに、リロイが普段、自分からしょっちゅうキスするのは、頬とか額とかばっかりなのが頭にくる。
あと、抱きついてほお擦りしたりとか、頭を撫でたりとか……そういうことをされても、飢えを満たせないばかりか、心臓の辺りが妙にむずむずして変な気分になるのだ。
「気持ちよくなるのも大好きなくせに、素直じゃないぁ」
リロイが楽しそうに喉を鳴らして笑い、乳房をやわやわと揉み始める。
「ん……だって、早く、欲しい……」
尖った頂を指で弾かれ、ファルチェの喉から甘い声が漏れる。音をたてて乳首を吸われると、背中をたまらない疼きが走った。
胸に吸い付くリロイの頭を、夢中でかき抱く。
悔しいけど、気持ち良い。膣奥がジンと熱くなって、蜜が零れ出してくるのを感じる。
膝をたててリロイの下腹部を擦ると、衣服越しにも固く膨れている雄の感触がわかる。
「こら、悪戯するなって」
リロイが困ったように笑い、ファルチェの足を大きく開かせる。
「ああ、すごく欲しそうにヒクヒクしてる」
濡れた秘所の表面をヌチュヌチュと撫でられ、駆け抜けた快楽に背筋が震えた。
「あっ、あっ」
短く喘いでいると、リロイが手早く衣服を脱いで、滾った肉棒を取りだす。
「どっちの口に欲しい?」
鼻先に突きつけられた先端から漂う、濃い雄の匂いに、ファルチェの目がトロンと潤む。
これにしゃぶりついて、熱い精を全部飲み干しても満足できるし、そっちのほうが手っ取り早いけど……。
「リロイ……こっち……」
陰唇の横に指を添え、濡れそぼった入り口を割り開いて見せた。
今日は朝から頑張ったんだし、約束だから好きなだけ貰う。
こっちもいっぱいにしながら、キスも沢山して、リロイは両方満足させるべきだ。
「了解。じゃぁ、慣らさないとね」
リロイが少し掠れた声で囁き、熱い息が耳をくすぐった。
どれだけ動いても、滅多に息を乱したりしない男なのに、この時ばかりは呼吸が荒くなる。
「別に、慣らさなくて良い……」
潤んだ目でリロイを見上げ、催促した。
慣らさないと最初は痛いけど、どうせじきに気持ちよくなるんだから、わざわざそんなことしなくて良いと思うのに……。
リロイはファルチェの脚の間に顔を埋めると、花芽を舌先でチロチロと舐める。
「ああっ」
ファルチェの腰が大きく跳ね、秘裂からどぷりと蜜が噴き出た。蜜を啜られ、充血した花芽を舌でこね回されると、あまりの気持ちよさに頭がクラクラしてくる。
浅く早い呼吸を繰り返し、リロイの寄越す快楽が身体中で膨れ上がっていくのを感じる。
コイツの思い通りにされるのが悔しいなんて、考える余裕もなくなってくる。
熱い舌で花芽をさんざん嬲られ、ファルチェは大きく身体を痙攣させて達した。
「は、あ、はぁ……」
額に汗を浮かべ、ぐったりと脱力しているファルチェを、リロイが手の甲で口元を拭いながらニヤニヤと見下ろす。
「まだわかってないみたいだけど、突っ込んで出すだけってのは、味気なさすぎるよ。僕だって、イク時の可愛いファルチェを十分楽しみたいんだ」
「っ……んで、リロイが楽しむのさ……」