『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-1
卒業してから4年目。
上司のセクハラにも、お局の嫌がらせにも、同期のやっかみにも慣れた。
社会人は忙しいし、疲れる。でも自由だ。
ただ時々、心の中をすぅーっと風が吹く。学生時代には感じなかった何か。
この満たされない、寂しい気持ち。
「あゆみちゃんに届きものがあったわよ。」
久しぶりに実家に帰ると、母が奥から何やら持ってきた。
それを眺めてから目を見開いた。
思い出すのは7年も前のこと......。
※
「あゆみ、あんたぶりっこなんだよ。キショい。」
サークルの女の子3人に囲まれた。
おいおいここは大学ですぜ。中学校じゃないんだからさぁ。
もっとスマートにやりましょうよ。しかも、部室の前って...
「やだぁ〜コワーイ。」
彼女達の怒りを煽るよう上目づかいで言ってやる。集団でしか行動できないあんた達なんか、ホントは全然怖くないし。
「そういうのが最悪だって言ってるんだよ!」
リーダー格の麻衣子あたしの胸をドンとついた。
「男の先輩と見ると、色目つかって。」
麻衣子の腰ぎんちゃく香子が麻衣子に負けまいと、肩を押してくる。
残念ですねぇ〜。先輩だけじゃありません。同学年にもきっちり色目は使わせてもらってますよ。
だって自分に好意のある可愛い女の子を悪く扱う人なんていないでしょ?
それを使わない手はないじゃない。
悔しかったらあんた達もやってみればいい。
まぁその顔じゃちょっと無理かなぁ〜。
「なんとか言いなさいよ。」
3人目の飛鳥が手を振り上げた。
おっといきなり暴力!それは予想してなかった!
殴られるっ。
覚悟して目を瞑ったけれども、その手があたしにあたることはなかった。