『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-3
「だからごめん。やっぱり部室譲れんわ。他のトコで遊んでくれる?」
そんな事を言い出したので、すかさず言った。
「私、手伝いますよ〜。」
にっこり微笑んだ。ちゃんとイイ後輩ぽく。
雪見先輩はちょっと考えるような顔をしてから
「じゃ、頼もっかな。この子借りるね。」
そう言って私の腕を引っ張って、部室に入った。
部室に入る瞬間、呆然としている3人の様子が目に入って可笑しかった。
パタン。
ドアが後ろで閉まった。
しばらくすると3人が階段を下りていく音が聞こえた。
「ありがとうございますぅ〜。助かりました。」
できるだけカワユク言ってみた。
雪見先輩は苦笑している。
「ねぇねぇセンパイは、あまりサークルに来られませんよねぇ?私、仲野あゆみっていいます。センパイのこと私も雪見センパイって呼んでいいですかぁ?」
「どうぞ。真田雪見、四年生です。あんまり会うことないと思うけど、よろしく。」
口調はソフトだけど、関わりたくないと思ってるんだろうなぁ......。
姉が、そうだった。
いつでも澄ました顔して、清楚なふりして、両親の愛を一心に集めて、あたしと関わりたくない、って顔をしてた。
雪見センパイはあたしを完全に無視して、ホントに棚から漫画やら小説やら写真集やらCDやらを取り出し、私物の整理を始めた。
「手伝いますぅ。」
とりあえず手を出してみると、
「いや、他人に触られたくないんだ。ごめんね。」
呆気なく断られた。
とりあえずボーっとその細く白い手の動きを見つめてみたけれど、どんどん沈黙が溜まっていって、先に耐えられなくなったのはあたしの方だった。
机の上に無造作に乗っているOGからの年賀状を手に取った。OGらしき女の人とその旦那らしき人が日光東照宮のサルを背景に2人でにっこりとこちらを向いている。
「なんなんでしょうね。大人になると、皆やりますよね。旦那とのツーショットや子供の写真貼り付けた絵葉書。恥ずかしくないんですかね。陳腐だと思いません?」
写真を見た瞬間イライラしてつい本音が出てしまった。
雪見先輩はふふふ、と笑った。子供扱いされているような気がしてむかついた。
それが顔に出ていたのか、
「ごめんごめん。いや、私も幸せ自慢コンテストですかって反発していた時期があったなぁって思って。」
雪見先輩は謝りながらそう言った。