『graduation番外編〜彼女が嫌いな彼女〜』-2
バタン。
部室のドアが開いて、そのドアに押された形で飛鳥が前につんのめったから。
部室は電気が点いていなくて真っ暗だったから、誰もいないって思っていたのに―――。
その思いは他の3人も同じだったらしく、罰の悪そうな顔でそのドアから出てくる人をそっと見た。
「おはよう。」
その人は目をこすりながら出てきた。
入学してサークルに入ってから2ヶ月、1度も見たことのない人だった。
「ゆっ雪見センパイっ!」
それだけ言って麻衣子が声を失った。どうやら先輩らしい。
「おお麻衣子ちゃんだっけ?新入生歓迎会以来だねぇ。」
パッチリと目を開いたその人を見ると、私の方が声を失った。
美人だ。
いや、彼女より美人なんていくらでもいるだろうけど......
白いシャツにブラックのジーンズと真っ黒なショートカットがやたら似合っている。
襟まわりが大きく開いたショッキングピンクの半袖セーターにミニスカ茶パツのあたしとは、どこまでいっても交差点のないようなヒトだ。
「ん?4人集まっちゃって何してんの?部室使う?今年の1年生は仲イイネ。」
大きなあくび。
今起きたばかりですよ、というアピール。
あんな大きな声で罵っていたりしたのだ。雪見先輩が麻衣子たちの吊るし上げに気付いていないハズはなかった。
なのに、お馬鹿麻衣子ズはほっとした顔をしている。
自分達のやったことはこの先輩には気付かれてはないのだと――。
だから馬鹿はヤなんだよ。あーあやっぱこんな大学来るんじゃなかった......。
「雪見先輩。そう言えば浅野会長から聞きました。就職決まったそうですね。おめでとうございます。青葉出版なんてスゴすぎです。」
先程とは打って変った声色で香子がオベンチャラを言った。
...4年生なのか、この人。
「センパイが学校に来られるなんて珍しいですね。今日はどうされたんですか。」
飛鳥が正しい日本語を使っている。
リンチなんて中学生並みのことをするくせに、先生とかセンパイとかにはちゃんとできるんだ。
そんなのぶりっこよりもよっぽどキショいじゃないか。
「昼寝しに来ました。」
雪見先輩は笑いながらはぐらかした。
「とか言って、実は部室に私物取りに来たんだった。」
絶対、今考えただろう。