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『rule【A面】』
【青春 恋愛小説】

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『rule【A面】』-10

小百合が玄関から出て行く音を確認すると、おもむろに時田が自分の鞄の中から小さい箱を取り出した。

「これ、気持ちだけ。お誕生日おめでとうございます。」

言われて初めて気がつく。

そっか...今日はわたしの誕生日だった。

1週間前までは覚えていた。

なのに最近は時田のことばかり考えていて、忘れてしまっていた。

昔はあんなに大騒ぎした『自分の誕生日』...。

「そんな...時田の誕生日にあげてないし、貰えないよ。」

そう言ってみたが「気持ちだけですから」と無理やり渡された。

「なんだろう。」

紅色のサテンのリボンを解いて濃紺の小さな箱を開けると、可愛らしい赤いピアスが入っていた。

「いつもトウコさん、青とか緑とかシルバーが多いけど、ホントは赤とかピンクとかそういうのも似合うんじゃないかと思ったんです。」

時田からモノを貰うのは初めてではなかったが、今までは食べ物とか紅茶とか香水といった「後に残らないもの」だったから、驚いてしまった。

...わたしの右耳のピアスの穴が塞がったのも知らないんだ...

それなのに「嬉しい」なんて思ってしまうなんて......

また穴を開け直そうなんて思ってしまうなんて...

そっと時田を見ると、満面の笑顔が返される。

ああもうダメ。

赤いピアスを、わたしは左耳にさしながら、わたしはその言葉を吐き出した。

「このゲーム、『THE END』だよ。」

不毛。

何も生み出さない時田とのこの関係に、一体わたしは何を期待して、何を求めていたというのだろうか。

「時田。わたしの負けだよ。わたしはあなたを本気で束縛したくなってしまったから。」

時田は驚いたように目を見開いてからわたしの左頬に手を伸ばした。

「あなたは馬鹿ですよ。ちょっと考えたら分かることじゃないですか。」

泣きそうな目。

必死な声。

頼りない、崩れ落ちそうな...。

「俺とあなた、2人ともが『相手を本気で束縛したくなってしまった』ら、このゲームは終わりじゃなくなる。」

そんなことは分かっている。

でも...

けどね...

「やっぱり、終わりなんだよ。」

わたしは勇気を出して次の言葉を振り絞った。


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