美人キャスターの想い-1
東京赤坂に本社を構えるテレビキー局、大江戸TVの22時。看板報道番組『NEWS・TODAY22』の番組内で放送原稿に目を落とす、伊集院雅子は、その凛とした美貌に憂いと微かな怒りを湛え、原稿を視聴者に訴えかけるように読み上げる。瓜実型の端正で純和風な顔立ちだが、通った鼻筋は西洋的な美女を彷彿させる。切れ長の瞳が印象的だ。今年で28歳。KO大学在学時に友人に勧められて出場したミスコンでグランプリを獲得したことで、その気の無かったTV界に足を踏み入れてはや六年。バラエティと報道の垣根が極めて低い日本のマスコミ界において、かなり硬派な番組作りを売りにする大江戸TVに局アナとして入社したことは間違いではなかったと、雅子自身感じている。もともとは、フリーのジャーナリストや弁護士を目指していた雅子は、大江戸TVの先輩である、ある男の熱心な勧誘で、女子アナになることを決めたのだ。その人物、大江戸TV報道部この人にあり、と言われた辣腕記者、鷹見恭平は今、彼女と恋人関係にある。
「次のニュースです・・・。東日本大震災以降、稼働を停止していた静岡県にあります、熱海第一原発の再稼働を曽我部内閣が承認した問題で・・・」
キャスターという仕事をする中で雅子は常々想う。なぜ国民は何時も世事に疎いのかと。わずか四年半前に起きた大災害に伴う福島第一原発の事故。その被災者の傷すら癒えぬというのに、かくも経済優先主義をひた走る政治家を選挙で勝たせ、同じ轍を踏ませるような道を選ぶのか、と。この熱海原発の再稼働はその最たるものだ。だが、雅子が、諦観を超越し、とても動かせぬ世論を動かさんと切に願いながら放送に臨むには、もう一つ理由があった。
一週間前――――――
金曜深夜の帝都ホテル。伊集院雅子は騎乗位の姿勢で、激しく突き上げる数年来の恋人、鷹見恭平の愛を受け止め、そのピストン運動に身を委ねていた。
「あッ、あッ、あぁッ、い、いぃッ・・・。恭平さん・・・いいッ・・・」
普段は凛とした美貌を甘く歪め、ニュースキャスターの怜悧な表情を押し殺し、恋人の名を呼び喘ぐ彼女は一人の若く美しい女だ。絶頂を堪えるように天を仰ぎ、推定Eカップ乳房が膨張し、その上で屹立しきった乳首を突き出すように肉体を震わせる。一方の恭平は、12歳年下の雅子の見事な肢体を慈しむように抱き寄せると、体位を変え、猛り勃ったペニスで聖なる穴を貫くように、女体の臀部を抱きかかえる。性感帯を知り尽くした深い仲となって3年が経過している。雅子にとっては、自分をこの業界に引き抜いてくれた尊敬する先輩で、当初から好意を抱いていた。だが、バツイチの恭平の離婚問題もあり、一線を超えたのは恭平がフリーとなってからだ。
「あうぁッ・・・あ、あッ、あぁッ・・・」
「雅子・・・イクよ…」
「え、ええ・・・、いいわ…。・・・はうぅッ・・・」
「僕たちは・・・、本当に、相性が良いようだね・・・」
「そうね・・・、でも・・・どうして、そんな改まって・・・あうッ」
愛を確かめ合うように結ばれる二人。恭平が強く逞しくイチモツを膣内に潜行させれば、雅子はそれを受け止めんと彼の絶倫ぶりを慈しむように締め付ける。やがてフィニッシュだ。だが、雅子には甘く激しいSEXの中に、恭平が抱える苦悩をいち早く察していた。
ベッドに敷いたバスタオルの上には、お互いに赤面してしまうほど夥しいラブジュースが滴り落ちていた。雅子は手際よくそれを片付けると、扇情的なビキニショーツだけを履き、ビールとグラスを取りに立ち上がる。身長163cmのすらりとした体躯は学生時代とほとんど変わらない。露わになった乳房は視聴者の間でも、また業界でもロケット爆乳と命名されている。恭平の座るベッドに並びかけた雅子は、ビールを蠱惑的な唇に流し込むと、甘えるように逞しげなその腕をとり、美貌を寄せた。
「ねぇ、貴方・・・。何を考えているの? もしかしたら、命でも狙われているとか? うふふふ」
努めて無邪気にふるまったが、恋人の様子から察するに、かなりの難問を抱えていることは間違いなかろう。今夜の様に情熱的に肉体を求めてくる時には、彼が決まって難局を迎えたシグナルだと熟知していたし、そんな不安を自分にだけは体現する彼が愛おしくてならない雅子だ。
「君には隠し事はできないな」
「そうよ、恭平さん。一緒になったら隠し事はダメよ、うふふ」
結婚は暗黙の了解の、近未来の予定だが、今宵雅子の言葉の真意はそこにはない。彼の悩みを聞き出したいだけだ。