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芸者小夏
【女性向け 官能小説】

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芸者小夏-10

10.
 私は新潟の海辺の町、糸魚川から出てきて東京の看護学校に入った学生で、生活費と学費のためにアルバイトで芸者をしていたんです。
 いよいよ卒業。
 糸魚川には、祖母の介護をしながら母が私の卒業を待っています。

 東京に出たときは、芸は身を助くとばかり、軽い気持ちで芸者になりました。
 卒業したら、知らん顔をして糸魚川に帰ってくれば、分りやしないと思ったんです。
 まさか、初恋の人に似た啓介さんと出会って、付き合うようになるなんて。
 啓介さんには、誤魔化しようがありません。
 
 最後の夜は、もう諦めるしかないと心に決めて、生れて初めて、啓介さんに生の中出しをしてもらいました。
 啓介さんが、本気で私を愛してくれている・・・そんな気がして、狂いそうになりましたが、矢張り諦めるしかありません。
 妊娠しないようにと、アフターピルも用意をしましたが、若し出来たら産んで育てようと決心して、結局ピルは飲みませんでした。
 妊娠はしませんでした。
 
 何時までもくよくよしている余裕は無いので、気を取り直して、金沢総合病院に准看護婦として就職しました。
 
 今年は雪が深く、路面凍結によるスリップ事故が多発して、病院は大忙しでした。
 夜勤の夜、高速道路の多重衝突で、3人の怪我人が運び込まれてきました。
 
 そのうちの一人が啓介さんと知って、びっくりしました。
 頭を打って意識がないので、CTスキャンで検査の上、入院になりました。

 夜勤明けに、啓介さんのベッドを見に行きました。
 その時の啓介さんのびっくりした顔。
「えっ、・・・なんで小夏がこんなところに?」
「私は夏子よ。この病院の看護師です」


 幸い、脳検査の結果は大事無いとのことで、3日間の観察の上、退院となりました。
 啓介さんには、黙って離れてしまったことで、猛烈に怒られました。でも、私のことを想っていてくれた気持ちが分かって嬉しかった。

 私のほうの事情も理解をしてくれて、兎に角再会を喜んでくれました。
 啓介さんは、出張で新潟に来ていて、慣れない雪上運転で事故に巻き込まれたそうです。




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