B:3-4
帰途に就く車の中、二人はいつもと何ら変わらない会話を行う。
「いやー、燃えてたねぇ」
「たまにはな。さて、次はアナルでも貰おうかな? いいか?」
「あ、それなんだが……」
急に口ごもるAにBは怪訝な顔をする。運転中で、Aの表情を覗うことはできないが、なにか後ろめたいことでもあるのだろう。親友の状態は雰囲気でわかった。
「なんだよ、隠さず言えや」
「いや、絶対怒るし」
「ああ、怒るな。事によっては」
「うわ、絶対怒られるっ」
「はよ言えや」
「アナル……やっちゃった。てへっ」
「殺す」
そう短く言うと、Bはハザードを付けて車を路肩に停車させ、エンジンを切った。
「うわあ……めっちゃ怒ってんじゃん」
歯をガチガチ震わすAの蒼白になった顔面を、街路灯の明かりがさらに青くして照らした。
「は、話せばわかる。お、お詫びに俺のケツを差し出すから、な? な? 許してっ」
拝むように両手を合わせるAを睨み付けながら、Bは口を開いた。
「よし、じゃあ焼けた鉄パイプでも突っ込むか」
「いや、死んじゃうじゃん!」
「殺すと言っただろ?」
「ひえっ……」
短く呻いたAに、刹那、アイアンクロ―が炸裂した。
「お前なあっ、俺がドつまらん無意味な会議をタラタラとやっている間に! ええ!? アナルやっただと? 何が“てへっ”じゃ、このバカが!」
「いででででで! 死ぬ! 死んじゃうって! 頭割れる!」
「いっそ死ね! それとも何か? やっぱテメーのケツ穴にぶっとい鉄パイプを突っ込んでやろうか!?」
「ごめん! ごめんって!」
「だいたい、あのクソ議員め、くだらない揚げ足取りやりやがって!」
「それ、俺カンケーねぇじゃねーか!」
涙目になって当然の非難の声を浴びせるAに構わず、Bは日ごろの鬱憤を晴らすように、さらに指に力を込める。
「あぎゃああああ! 俺が悪かった! もうしないっ、許してーっ」
Aの悲鳴はしばらくの間、車外まで響き続けた。