第1話 艶初め-2
「おい!・・・こっちは真剣なんだぞ」
慎吾は勘に触ったのか、少し怒った表情を見せた。
「悪い悪い・・・そう怒んなよ。それよりも、例のスナックのママとはどうなったんだよ?」
「ああ・・・あれか?。たく・・・実は既婚者でよ、旦那に浮気がバレそうになって、もう来ないで欲しいってよ」
スナックのママは、慎吾の行きつけのお店のママで、性的関係でもあった。
熟女と囃し立てられるのは、慎吾よりも一回りも年上の五十代前半の女だからだ。
「だって、バツイチじゃなかったのか?」
「ああ・・・バツイチなのは確かだが、どっかのお偉い社長さんと再婚していて、趣味みたいなもんで店を開いてるんだってよ。どおりで、客も少ないシケたスナックなのに続いてると思ったよ」
「だからお前も誘われたんだろ?」
「まあな・・・客も12時を回る頃には閑古鳥。バイトのホステスをとっとと帰せば、飲み放題ヤリ放題のラブホに早変わりだからな。ふふ・・・」
「おいおい・・・そのスナックのソファーは、お前のザーメンだらけじゃねえのかよ!?」
「かもな・・・ハハ・・・」
下の話に慎吾は機嫌を取り戻し、終始穏やかな雰囲気となった。
その横では、相変わらず俯いたままうなだれる拓斗が座っていた。
「はあ・・・辛気臭い奴だな、お前もちょっとは付いて来いよ」
うなだれたままの拓斗に対して、業を煮やした慎吾が話しかける。
「おいおい、真面目な奴をあんまりいじめんなよ」
「でもよ、俺らがこいつの頃には、遊び放題で下ネタにはガンガンくらいついてきけどな」
「まあ・・・お前とはタイプが正反対だからな」
「何か、つまんねえ生き方だな。どうせそんな感じじゃ、女もまだなんだろ?。熟女で良かったら、筆下し紹介してやろうか?」
慎吾は拓斗の肩を叩いて、小馬鹿にする様にニヤ付いた表情で話した。
「もう、そのくらいで勘弁してやれよ。それより、お前ら来週から久保田さんの現場だろ?。困るんだよな、こんな忙しい時によ」
同僚の男は、拓斗の気持ちを察したかのように、話題を変えて話しを反らした。
慎吾と違い、場の雰囲気の気配りするほど、繊細な一面があった。
「ああ・・・確か、大きな屋敷のリフォームとか言ってたな。施工主が、未亡人の一人暮らしとか・・・・・・」
「おっ・・・もしかすると、お前の大好きな熟女さんかも知れね〜な」
「いや・・・還暦くらいとか言ってたから、さすがに俺の許容範囲に入るかは分かんね〜な。あっ・・・そう言えば、久保田さんに電話で聞いておきたいことがあったんだ」
慎吾は、もう少しで終わる休息時間を気にして、慌てる様に作業服の内ポケットからスマホを取り出しだ。
ブルブル・・・ブルブル・・・・・・。
正志の脱いだ作業服のポケットの中で、マナーモードの携帯が震えていた。
それを横目に、寝室に移った正志と峰子は、白いダブルベッドの上で生まれたままの姿で、肌を交わしていた。
「はあ・・・はあ・・・・・・」
荒い息づかいで、峰子の中で往復する正志の物。
二人はすでに結ばれて、お互いが激しくなっていた。
「あっ・・あっ・・・久保田さん!」
正志の突き刺さるもので、堪え切れず声を荒げる峰子。
還暦前の操は、正志のみなぎる若さで潤いを取り戻していた。
「南条様・・・・・・」
正志は最後を見通して、峰子に合図するかのように口づけを交わす。
お互いの唾液を混合するように、激しく舌を絡ませた。
やがて頂点を見据えて、お互い両手を握りしめながら、快楽の極みを共有する。
正志は、終幕の口づけを終えると、腰つきを激しく往復させて、最後を振り絞った。
「南条様!・・・南条様!・・・・・・」
峰子の事を連呼した瞬間、正志の物は勢いよく放たれた。
峰子の中で感じる、生温かい樹液。
恍惚の表情で、正志の背中に手を回して、峰子は感じ取っていた。
「はあ・・・はあ・・・・・」
正志の息づかいは止む事なく、全てを出し切る様にゆっくりと峰子の中で往復していた。
溢れ出る、交わる樹液。
峰子のアナルを伝うように、シーツを汚していた。
しばらくして正志は、峰子を腕枕しながら天井を見上げていた。
満足気に、胸元に寄り添う峰子に対して、正志は複雑な表情で思い悩んだ。
快楽の喪失感からくる、峰子の様な年増の女と関係を持った後悔。
さらに、仕事の立場を利用した過ち。
全てが、正志の中で複雑に絡み、思い悩ませていた。
「良いのよ・・・私は、これ以上見返りを求めたりしないわ」
峰子は胸元にうずくまりながら、正志の表情を一切伺わずに話した。
それは、最初から正志の気持ちを察っした言葉だった。
正志は少し安堵したのだろう。
寄り添う峰子の肌の温もりを感じ取ると、再び勢いよくみなぎりだしていた。
峰子を見つめる様に伺うと、そのまま口づけを交わして激しく肌を交わした。
ベッドの上で二人は、再び陥る様にお互いの世界へと入った。
−つづく−