耳たぶ-2
「そろそろ時間だな。延長する前に出よう」
えっ?私の身体の事に気付いていない?
「う・うん。トイレに行って来てもいい」
洪水のように溢れた愛液を下着から拭き取りたかった。
何事も無かったように祐希は去って行き、私は職場に戻った。休憩時間にしては長過ぎるので心配されたけど、貧血で具合が悪くなったとその場を乗り切った。
仕事に戻りながらふと思った。
私はさっきイったのだろうか?瞳を見つめられただけでイクなんて。イッたような気がしただけなんだろう。セックスのイクとは少し違ったような気がする。
もう一度だけ確かめてみたい。・・でも・・
見つめられただけでイッてしまっていたら・・セックスしてしまったら一体どうなってしまうのだろうか?考えただけでも少し怖くなった。
あっ祐希が来た。楽器を持っている。そのまま音楽スタジオペンタックスに入っていくのかしら?
「よお!さっきはありがとうね。今夜は飲みにでも行く?北海道という居酒屋にボトルが入っているんだ」
祐希はお酒が大好きなようだ。
「これから目の前のクイックリー24でマッサージなんだ。終わったらどうかな?ちょっと来て」
祐希は私を人気のない路地裏に連れていった。
「なんですか?まだ仕事中ですよ、戻らないと」
祐希は私の頬に顔を近づけて耳元でこう言った。
「食事の後はさっきの続きだ」
私の身体はその言葉に反応した。正確には胸がときめいた。
そう言うと祐希は私の耳たぶにキスをして耳の穴に下を入れてきた。
「ちょっと、やめて下さい。みらたら・・どうする・・んです・・か」
私は恥ずかしい気持ちとくすぐったさで首を窄めた。
祐希はそのまま私の「耳たぶ」を銜え、耳たぶをしゃぶり私をからかっている。
「ゆ・祐希さん、や・やめて」
祐希は再び耳にキスをするとクイックリー24に消えていった。
私は池袋にある添い寝カフェ「フェアリーズ」で働いている。
添い寝カフェというのは聞きなれないかもしれないけれど、紳士的な男性のみが添い寝して会話を楽しむ新しいスタイルのカフェ。
「あのさ、お金を崩したいんだけど、いくら?」
それが祐希との出逢いであった。祐希は私に将来の夢や何になりたいのかを必要以上に聞いてきた。なかには学費を稼ぐためにアルバイトをしている女の子もいるからだ。
「ふーん、アパレル系のお店をやりたいんだ。だったらもっと感性を磨かなきゃ駄目だよ」
確かに祐希はお洒落だ。足元を見れば分かる。コールハーンのローファーを履いている。
「男性がローファーなんて珍しいですね」
「おまえ何言ってんだ?マイケル・ジャクソンは毎日ローファー履いてるぞ」
ファッションの事を突き詰めるとすぐに突っ込まれるので私は祐希のセンスを観察するようにしていた。
「ちょっと脱いで」
「お店ではそういうサービスはありませんよ」
「いいから脱いで。君の下着のセンスを見てあげるよ」
「・・わかりました。祐希さんだけですよ」
私は衣服ぬぎ下着姿のまま立った。
自分の下着をチェックされていると思うとなんだか恥ずかしい。
「うん、なかなか良いセンスしてるよ。実はオレ、女性用の下着を輸入してるんだ。国産だとワコールのサルートが好きだ。サルートは世界に通用する下着だよ」
時々分らなくなる。
いくら多趣味だといえ女性用の下着の知識まであるとは。
逆にいえばこの人のこのセンスを取り入れたら上層階にいる人と接しても決して失礼な事はないのだろう。
「もう、着てもいいですか?恥ずかしいです」
「駄目だ。オレが君を予約している40分間は下着のままだ」
そんな事を日々繰り返しているうちに、私も下着に詳しくなっていった。奇麗な下着を購入し、身につけるのが日々の楽しみとなっていた。
そう。見てくれる人がいるからなのでしょう。鏡を見るのが楽しくなった。
出勤前。奇麗な下着をつける前のシャワー。
彼氏のいない私はその水圧で性欲を満たしている。
祐希に抱かれる日を想い浮かべて..