子連れの未亡人-1
貴道と女とは、あるフィットネスクラブで出会った。何度か顔を会わせるうちに互いに話をするようになった。
出会った頃の女の胸は高く大きく、肌には牛乳のような白さと滑らかさがあった。髪はいわゆるブロンド、普通の金髪なのだが、巻いてはいなくて、素直に柔らかかった。豊かで大きな尻は、まさに女という性の存在を主張していた。その恵まれた体躯を、純粋に自然の造形美として貴道も愛でずにはいられなかった。
その視線を女は感じていたに違いない。話しかけてきたのも向こうからだった。
一緒に食事でもしないかと貴道は誘われた。女は未亡人で、十になる娘と住んでいると言った。この時すでに事の面倒な顚末の予感が貴道にはあった。しかし、会社の同僚でない人間との付き合いなど皆無に近い貴道は、一度くらいなら付き合っても面白いかも知れないし、それが社交辞令でもあるだろうと思った。断ることで、フィットネスクラブに行きづらくなるほうが、貴道としては暮らしの損失なのであった。
予約したレストランに来てみると、女は娘と待っていた。家に一人で置いてはおけないからと女はすまなそうに言った。知らない男と母親が食事する場面を見て、この子はどう思っているだろうと、子供の好きな貴道にはまずそれが気がかりだった。
子供も母親に似て美しかった。薄青い瞳に長い金髪の、弱そうな細身だったが、習ってアイススケートをやっているのだという。貴道に笑って挨拶した。貴道はわざとその子の隣に腰掛けた。子供の服も瞳のような青色だった。貴道が、好きな色なのかと尋ねると、はいと答えた。あまり喋ることなく、貴道の聞くことに嫌がる様子も見せず、よく通る声で返事をした。
母親は貴道にアルコールを勧めた。そして自分もまた飲んだ。子供に気遣い、あまり酔わずに貴道はいたのだが、母親は飲み屋にいるかの如く酔ってしまい、結局、貴道が家まで送っていくことになった。子供とはすっかり仲良くなれたものと貴道には感じられた。
家に着いて、貴道が帰ろうとした時、女は中でもう少し飲んでいけと誘った。断る貴道の手を引いて子供も、ママは寂しがり屋だからいてあげてくれと真面目な顔で頼んできた。
女の裸の胸と胸の間は酔いのせいで赤みを帯びていた。桃色の乳首は上品に、小さな乳輪の上で尖っていた。女は体躯の立派さに引き比べ、わずかな体臭しかなく、汗ばんだ腋も、開いた両腿の付け根も、不思議と清潔だった。そして、髪と同じ柔らかな金髪が生えていた。経産婦独特の開いた女の穴が、息に合わせて動き、下の寝床をぬめり多く湿らせていった。
女は、貴道の愛撫に単純に反応した。ただ貴道がしているというだけで、何度も気を失わんばかりになった。緩いけれども複雑に細かく纏い付く女の穴の中で、貴道もごく自然に、しかし何度も漏らした。
すぐ隣に子供は背を向ける格好で眠っていた。深い寝息を立てていた。
疲れて酔いのだるさも重く感じた貴道が、ふと女に言ってみた。
「女の子って、どんなふうなんだろう。」
女は笑って起き上がり、子供の寝間着の下をするりと下ろした。子供の脚を持ち上げ、貴道に示しながら
「この子は起きないわよ。お好きにどうぞ。」
と言った。貴道は触れてみた。顔を近づけにおいを嗅いでみると、懐かしい哀しみと清々しさで頭が満たされてしまった。
気がついたら自宅の翌朝だった。酔いは醒めていたが、目に泣き腫らした跡があった。寝床の横に、すっかり汚れた女の子の下着が数枚落ちていた。
女のことはいつ忘れてもいい。だが、あの子を手放したくないと貴道は感じた。