聖夜の約束-4
「蓮、タバコ吸うんだね。知らなかったよ。」
「ん?あ、そっか。霞は知らなかったのか。霞の前では吸わなかったからね。」
「なんで?タバコ吸ってる人って吸えないといらいらしたりするんでしょ?」 「そうだけどさ。霞、女の子だし、体に悪そうじゃん?」
「タバコが体に悪いのは女も男も関係ないんじゃないの?」
あたしがそういうと蓮は咳払いをし始めた。
「えっと、だからさ。女の子はさ…。その…。将来、子供を産む体だろ?だから…。」
そう言いながら顔を赤らめる蓮。そんなことまで考えてくれてたの?蓮…。
「やぁだ、蓮ってば。子供なんてまだまだ先の話でしょ?だいたい結婚だってまだまだ先なんだからぁ!」
「うん。そりゃ、そうなんだけどさ…。でも、その、なんだ?なんて言うか…。」
なんだかいつもの蓮らしくない。いつもはこんなにもじもじしたりしないし、はっきり言うのに。
「なんか変だよ?今日の蓮。さ、あたしはご飯の準備するから。キッチン借りるよ?蓮は部屋でタバコでも吸っててよ。」
蓮を部屋に追いやり、あたしはご飯とケーキを作り始めた。ケーキのスポンジは家で作ってきたのであとはトッピングだけ。ケーキを先に仕上げ、冷蔵庫に入れ、料理を作った。
なんか…、新婚みたいじゃない?大好きな人のために料理をする。こんな喜び、今まで知らなかった。あたし、幸せだなぁ。
この前まで悩んでいたのが嘘みたい。なんであんなこと悩んでたんだろう?今になると、今まで蓮があたしとさくらを比べたりしたことなんてなかったことに気付く。必要以上にさくらの話をしたこともなかった。
あたしってバカ。蓮と別れることを考えたなんて。
蓮のいない生活なんて考えられない。毎日、何をしてたって蓮のことを考えてる。他に考えることなんてないくらい。蓮と別れたら、あたしは何を思って毎日を過ごせばいいんだろう?それくらい、蓮のことが好きなんだ。
そんなことを考えていたら、料理はあっという間に出来上がった気がする。
「れーんー。出来たよ。そっち運んでいい?」
「ちょ、ちょっと待って。」
「えぇ?冷めちゃうよ?何してるの?」
「や、その…。あ、ロウソクたてようと思って準備してるんだよ。クリスマスだしさ…。」
「とりあえず料理運んじゃうよ?あたしも手伝うから。」
部屋は電気が消えていて、テーブルの真ん中にロウソクが3本たっていた。
きれい…。なんか、すっごいロマンティック…。
「なんだぁ。もう準備できてるじゃないの。」
作った料理とケーキをテーブルに並べる。
「すごいな…。これ、全部霞が作ったんだよな?」 「そうだよ。もちろん。さ、あったかいうちに食べようよ。お腹すいたでしょ?」
テーブルの前に座ろうとすると…。
「ちょっと待ったぁ!霞はこっち!!」
蓮は慌てたように、あたしを窓の前の席に座らせようとする。
「?どこだっていいじゃない。ま、いっか。じゃ、こっちに座ろうっと。」
蓮の言う場所に座る。
?
足に何かがあたった。 「あれ?蓮、なんかテーブルの下に落ちてるよ?」 足にあたったものを拾った。それは…。小さな箱だった。
「…開けてみて。それは霞のだよ。」
え?あたしの?これって…、この箱ってまさか…。
小さな期待を胸に、その箱をそっと開けてみる。
そこには…。
静かに、ロウソクの光を反射させて輝く、指輪があった。
「れ、れ…ん…?これって…。」
驚いて蓮を見ると、蓮は赤い顔をしているようだった。
「まいったな…。もっとちゃんと渡したかったのに。」
蓮は頭をかきながら話を続けた。
「今すぐじゃなくていいんだ。霞には看護師になるって夢もあるし。もし、霞が看護師になるって夢を叶えて、その時も俺のこと好きでいてくれたら…。結婚してほしいんだ。」
蓮の言葉に頭が真っ白になった。これって、プロポーズなんだよね?あたし、蓮と結婚できるの?してもいいの?