『Determined Miracle〜藍田咲子の長い一日〜』-6
簡単に見つかるだろうという読みは甘かった。
森のようになったそこは11月の6時にもなると、真っ暗でよく見えない。
慌てて出てきてしまったので、上着も持ってきてなく、鼻水が出てきてしまう。
雑草が邪魔だし、白いものがあったと思ったら広告やらティッシュだったりする。
「誰だよこんなん棄てたんわ。」
自転車のサドルが転がっていたりして、自然破壊のニュースを思い出したが、それどころではない。
全然例のブツは見つからないし、どんどん暗くなる。
暗いし怖いし寒いし……おなか減った。
不安だ。風邪ひくかもしんないし。
こんなとこで暴漢に襲われたりしたらひとたまりもない。
これは恥よりも、身の安全をとるべきかもしれない。
けど……もうちょっとだけ。
そうこうしているうちに時計は8時を回っていた。
「何やってんだよ。」
いきなり声が聞こえ、びくっとなる。
やばい。やっぱりもっと早く帰るべきだった。
おそるおそる振り向く……
「笹木……」
ほっとしたら、涙が出そうになった。
「馬鹿か、お前は。」
そんな言葉さえ、嬉しい。
可愛げのある女の子だったら、ここで泣きながら抱きついたりするんだろう。けど私にはそんなことはできない。
「……進路調査表、探してた。誰かに拾われて中見られると困るから。」
そう言うのがやっとだった。
「見てりゃ分かる。」
ぶっきらぼうに言いながら、笹木は私のコートを背中にかけてくれた。
「持って来てくれたんだ。ってか探しに来てくれたんだね。」
体と同時に、心まで温まるのを感じた。
「お前が凄い勢いで裏山に走っていくから、責任感じて教室で待ってたんだけど、あまりに遅いからさ。すげぇ探した。白い社から随分離れてるし、ここ。」
笹木はそう言うと、
「あ、発見」
指差した。
見ると低い木に白いボールがひっかかっている。
笹木がジャンプしてとってくれたのを、横からひったくるようにして奪った。
「見ちゃダメ」
「ってかそれ、俺のじゃね?」
言われて仕方なく確認するために、そのボールのグルグルのガムテープをはがし、紙を開いた。笹木からは見えないように、背中で隠して。