妹 小林明日香-2
「もしかして、あんた、毎晩、あたしで変なことしてるんじゃないでしょうね?」
英語の辞書を手に取った明日香が聞いてきた。
「んなわけねえだろ!」
「じゃあ、美咲ちゃんで?」
「あいつに女を感じたことなんかねえよ」
美咲ちゃんというのは、俺の幼なじみの橘美咲のことだ。今は少し疎遠になってしまったが、子供の頃から家族ぐるみの付き合いで、明日香もよく知っている。
「じゃあ、よく話している同じクラスの鈴木さん?」
「ええっ、何でそれを!? けほっ、けほっ、けほっ!」
図星を指されて、思わず咳きこんでしまった。
「不潔! サイテー! 鈴木さんのハダカを思い浮かべて毎晩、いやらしいことしてるんだ?」
「してねえよ!」
正確に言えば、<ハダカを思い浮かべて>ではなく、エロ恐怖新聞で<ハダカを見て>なので、一応否定した。
「ったく!」
明日香は顔を背けると、早足で歩いていった。
こいつに嫌われているのは事実なので言い訳するつもりはないが、自分のオナニーを妹に指摘されるというのは結構、恥ずかしい。
と、その時、
ドテッ!
明日香が足を滑らせてコケた。
何もない真っ平らなところでコケるなんて、おかしなやつ。もしかして相当、怒ってて動揺してるのか、と思っていると、次の瞬間、とんでもないものを見てしまった。
フリルのついたピンクの布地が目の中に飛び込んできたのだ。
パ、パ、パンティ!! 明日香のパンティ!!
いくら妹とはいえ、パンティに反応してしまうのは悲しい性(さが)である。まして明日香は誰もが認める美少女だ。
だから、こんな感想。
……ううむ。明日香のヤツ、わりと可愛いパンティ穿いてるじゃないか。ピンクでフリル付きとは参ったね。尻の割れ目もバッチリ浮き出てるし、オマ×コを包んでるクラッチ部分も美味しそう! 随分、立派に育ったね。兄として嬉しいよ。
だが、その時!
ドカッ! と英語の辞書が俺の顔に直撃した。頭がクラクラして意識を失いそうになる。そして……。
「あんた、何見てんのよ! サ、サイテー! 妹のパンツ見て欲情するなんて、し、し、信じられない!」
明日香が顔を真っ赤にして罵ると、そのまま部屋を出ていった。
「お、おいっ、待てよ……」
しかし、妹は振り返らない。
バタン! とドアが勢いよく閉められる。
あ〜あ、やっちまったな〜。
こうなっては仕方ないが、またもや兄としての権威が失墜してしまった。というより、これで完全にアウト! 今後、絶対に口を聞いてくれないだろう。
俺はそのままベッドに横になった。
ちらつくピンクの布地を打ち消すために、鈴木さんのオマ×コを思い浮かべる。
だが、たった今見た映像の方が鮮烈で、なかなか打ち消せない。