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例えばこんなカリキュラム
【二次創作 官能小説】

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〜 道徳・生命 〜-3

 ……。


 2番目の項目は『美しいものへ畏敬の念をもて』とのこと。

 My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
So was it when my life began,
So is it now I am a man,
So be it when I shall grow old or let me die!
The Child is father of the Man:
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.

 ウィリアム・ワーズワースは『虹(The rainbow)』で高らかに自然を賛美した。

 食べ物や四季といった自然の恵みの感謝し、富士山や四万十川の雄大さに感動し、地震や火山といった手におえない猛威を感じ、雪の結晶や動物の営みに感銘をうける――旧世紀であれば、美しいものへの畏敬とは、つまりこういうことだろう。

 現代はどうか? 
 現代における美しさとは、旧世紀の美しさとは似て非なる概念だ。 優秀な殿方は、放射能と廃棄物で汚染され尽くした地球を、腐海が地上を浄化するがごとく人為的に正常化した。 その過程で様々な造形が現れた。 それら生命を育むべく取り組んだ試みの名残こそ、失敗も成功も含め、地球の美とするに値する。

 食べ物は完全に工場生産。 地下100メートルからくみ上げた水と光、大気窒素を根粒菌による同定で栄養となし、海底腐葉土からリンとカリを補充することで有色植物を生産する。 あとは食物連鎖式に肉を生産できる。 また生物濃縮を起こさない藻類を起点とし、水産物の養殖も工場内で実現した。 林立する工場地帯の風景は、無機質かつ整然として嘆息を禁じ得ない。

 大地に根差しかけたセシウム、ストロンチウム他、各種放射性同位元素はUV感受性細菌により安定化を促進した。 その過程で大地が黒褐色に染まったものの、今では広葉樹林が復活するに至る。 黒と緑の鮮やかなコントラストこそ、地球再生の息吹きといえよう。

 大気循環からエネルギーを取り出すシステムは、富士山頂を起点とした実験体から始まった。 熱波により永久雪積を失ったかわりに人工物を手に入れた旧世界の世界遺産は、いつでも峻厳とした装いを見るもの全てに示してくれた。

 他にも現代美はいくらでもある。 地球の再生とヒトの持続的繁栄を期してつくられたシステムは、いまや自然界を支配しつつある。 この試みに秘められた美しさに気づかずして、現代人たる資格はない――以上が教官の弁だった。


 ……。


 最後の項目は『気高さを信じて生きよう』だった。 ジャン・ジャック・ルソーは『良心は魂の声だ』とし、老子は『人を知る者は智なり、自ら知るものは明なり』という。 欠点や弱点だらけの自分を素直に認め、メスとしてより良く生きようとする自分の萌芽を、私たちは大切にせねばならない。

 メスとして生きる喜び……『人』ではなく『ヒト科メス』であったとしても、生きる喜びはある。 けれど、なまじ幼年学校で『人』として扱われてしまったために、私たちはメスの喜びに目を背けがちだ。 他者に醜態を見ていただける喜び、本能の赴くまま自慰に励むことができる幸せ、行き過ぎた無様な振舞を躾けて頂ける嬉しさ、同胞と汚物を交換し味わうことができる温もり……どれ1つとっても、生を実感できる素晴らしい経験だ。 すばらしさに気づけないとすれば、それは私たちがもつ負の感情が邪魔しているせいだ。 

 人として、社会をリードするという誇り。 
 ――現実には、優秀な殿方に役立てていただける可能性にかけるしかないというのに。
 
 人として、困難に打ち勝とうとする克己心。
 ――現実には、子宮でしかものを考えられないメスは、子宮から外へは羽ばたけないのに。

 人として、謙虚に自分をみつめ高めるきっかけに気づくこと。
 ――現実には、これ以上謙虚になりえないほど、私たちは淫らでミジメで下等だというのに。

 『誇り』『克己心』『謙虚』といった無数の『負の感情』を卒業し、メスとしての自覚に目覚めることで、私達は気高く強く生きる道を歩きはじめる――。

 
 ……。


 滔滔(とうとう)と語る教官を前にするうちに、そんなものかと思えてくる。 反論したい気持ちもゼロじゃないけど、反論したとして、どうにかなるわけでもない。 それに教官が喋る内容には、頷くしかない部分があることも事実だ。 私たちはメスであって、命を輝かせるためには、大前提として『自分達がメスである』ことを忘れてはいけないんだろう。 『メスとして命を輝かせる』ための心積もりに、しっかり取り組むことが必要なんだろう。 ……そうした方が『幸せ』に近づけるんだろう。

 いつの間にかそんな風に、私も考えるようになっていた。 なってしまって、いた。


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