慰めあう女-7
「そんな…っ!」
「お嬢さんもいつかはお嫁に行かなくちゃ…。お父上もそれを望んでいらっしゃいます」
「嫌ッ! お嫁になんか行きたくない! 男なんか大ッ嫌い!」
「我が儘を言うもんじゃありませんよ。お嬢さんを想ってくれる素敵な殿方が必ず現れます。それに…」
お京は遠回しに大二郎のことを言っているのだが、椿は気がつかない。
「それに?」
「豆岩が…昔のことは気にしないから、二人で所帯を持ちたいって…。こんな薄汚れたあたしに…そう言ってくれたんです」
「……っ!!!」
その言葉を語るお京の幸せそうな横顔を見て、椿は続ける言葉を失った。
お京は既に心を決めているのだ。
意気消沈した椿は、もうそれっきり口をきこうとはしなかった。
翌日、了順宅を離れるお京を見送る時でさえも。
それから数日後。
秋山道場で物思いにふけっていた大二郎は一人呟いた。
(どうやったら…椿殿に俺の思いを伝えられるのだろう…?)
今回の事件のことは悔やんでも悔やみきれない。
かろうじて生命を救うことは出来たものの、純潔を奪われ、身体の隅々まで凌辱され尽くした椿。
しかし生来口下手な大二郎には椿を励ます言葉が見つからない。
花や菓子などを持って了順邸に通ってはいるのだが、今日の天気だの花が咲いたのといった当たり障りのない話題をたどたどしく語るだけだ。
暗く沈んだ椿にはまったく相手にされないし、最近ではお京にべったりで露骨に邪魔にされてしまう。
落ち込む大二郎に藤兵衛はこう言っていた。
(椿ちゃんは今、心も身体も深〜く傷ついておる。お前の思いの強さを身をもって証明し続けることが肝要。とにかく諦めないことじゃ)
どんなことがあっても自分の愛情が変わらないということを伝えるにはどうすればいいのか…?
はぁ…と、ため息をついた時であった。
「…ごめん」
道場の玄関に立っていたその人物は…。なんと、椿ではないか!
長く伸びた髪を後ろで一つにまとめた総髪で小袖を着ている。
いつもの若衆姿ではない、初めて見る娘姿に大二郎はたちまち赤面して言葉に詰まった。
「つつつ、椿殿! お身体は、ももも、もうよろしいのですかっ! いいい、今お茶を入れ、入れ…」
どたどたと奥の台所に引っ込もうとする大二郎。
「お待ちください。今日は…不肖・笹原椿、最後のお願いに参ったのです」
よく見れば、椿の後ろには箱を担いだいかつい中間が立っている。
何かただならぬ雰囲気で、ひどく思いつめた様子だ。
「つつ、椿殿ならいつでも大歓迎でござる! さささ、さぁどうぞ! お、お入り下され!」
大二郎はどぎまぎしながら、慌てて道場に招き入れる。
「実は…お願いというのは他でもない…。この道場を一時お貸し願えないだろうか?」
「この秋山大二郎、つつつ、椿殿の頼みなら…何でもお聞きいたす! して、何の御用に、おおお、お使いでござるか…?」
「私…本日、ここで切腹いたす所存。剣友である大二郎殿には介錯をお願いしたい」
椿はきっぱりと言い切った。
「え…? 椿殿…。今、なんと…?」
「己の剣の腕を鼻にかけ、勝手な振る舞いをした私が悪いのです。思えば浅はかでした。身から出た錆とはいえ…鬼畜どもに身体をさんざ汚されて、このまま生きていては父上に申し訳が立ちませぬ! 死んでお詫びするしかない!」
「そそそ、そんな!! 椿殿〜!! 早まってはいけませぬ!!」
「私はどうせ死ぬのなら…男として! 剣士として死にたいのです! 大二郎も同じ剣士ならわかるでしょう?!」
「そ、それは…」
美しい顔に浮かぶ寂しげな陰は、死を決意した悲愴さだった。
男どもに汚され、お京にも捨てられた椿にとって、己の剣だけが最後の拠り所なのだ。
一人の剣士として美しく死にたい。それが椿の最後の願いだった。
拒否すれば今すぐ脇差で喉を突くかもしれない。それほど思いつめた表情だった。
有無を言わせぬ雰囲気に、大二郎は従うしかなかった。
椿は従ってきた中間に屋敷に帰るよう命じると、残された葛篭から荷物を取り出した。
それは純白の死装束。そして三方と短刀であった。
道場の中央まで進むと椿はいきなり着物を脱ぎ始める。
白い裸身に大二郎は思わず目を覆った。
「つつつ、椿殿!! おやめくだされ!! めめめ、目の毒です!!」
「よいのです…。大二郎殿、私の身体の隅々まで目に焼き付けて欲しいのです。さすれば、私が何故死なねばならぬのか、よくお分かりになる筈です…」
椿が紐を解くと、最後の腰巻がはらりと下に落ちた。
一糸まとわぬ椿の美しい肢体。しかし下腹部の茂みの奥から何か赤黒いものがぴん、と飛び出している。
淫裂の先端にあるおさねが包皮を切り落とされ、剥き出しになっている。
飛び出したおさねは何本もの鍼で串刺しにされたために醜く変形し、親指ほどにも肥大化していた。
くるりと背を向けると、その尻たぶには幾筋もの刀傷がつけられている。
右の尻たぶに三十六本。左の尻たぶには三十七本。
この傷は、それぞれ膣と肛門を犯された数だけ刻みつけられたのである。
これだけの回数を犯されたのだ…! ということが初心な大二郎にもわかった。
椿は大二郎の目の前で両手の指をかけると、淫裂をぐぱぁ…と開いてみせた。
ぬらぬらとした肉庭と会陰部は大きく裂けて、縫合した傷跡が残っている。
(こ、これが…! 椿殿のあそこ…!)
初めて見る椿のぼぼ。夢にまで見た場所である。
大二郎は己の逸物が痛いほど勃起しているのを感じていた。
(椿殿を…止めなければ…!!)
そう思って立ち上がろうとする大二郎。
しかしあまりにも醜い凌辱の痕跡が椿の苦悩をありありと感じさせ、目の前に見えない壁でもあるかのように手が出ないのだ。