檻からの解放-15
三人が警察署から出ると、すでに太陽は沈み黒い空には月と星々が輝いていた。
「終わったな。」
東条がボソッと言うと、秀慈は首を振った。
「違うよ東条さん。これからが始まりです。僕はもうあの屋敷に住むことは出来ないし、雨宮グループの株価は大暴落すると思います。このまま学校に通えるかもわからない・・・。でも僕は絵茉を父から解放することができたからそれでいいんです。」
「秀慈くん、君は本当に出来た奴だな!本当にあの雨宮の息子か?」
「・・・違います。と言いたいですけどね・・・。」
「あ、すまねぇ・・・。」
東条はバツが悪そうに、後ろを歩いていた絵茉に振り返る。
「絵茉ちゃん、俺さ今回の事を書きたいと思っているんだけど・・・やっぱりいい気はしないよな・・・?先輩の名誉のためにもさ。」
絵茉は東条を黙って見つめた。誰にも一馬との関係を知られたくなくて何年も耐えていた絵茉の事を思うと、やっぱり無理だよなと東条は諦めたように言おうとすると、絵茉が先に口を開いた。
「構いません。どうせ週刊誌の人やテレビの人がこれからあることないこと書くと思いますから。でも私は東条さん以外はインタビューを受ける気はありません。真実だけを書いてくれるのなら構いません。」
「本当か?絵茉ちゃん・・・。いいのか?」
「はい。」
絵茉は決心したように言った。
「僕も東条さん以外の取材には応じない。東条さんのお蔭で絵茉は助かったんだから。」
次の日の朝、雨宮一馬が逮捕されたと言うニュースが世をにぎわせた。しかし、彼は容疑を否認し続けているらしい。各報道関係者たちはこぞって秀慈や絵茉に話を聞こうとしたが、彼らは一切それらを寄せ付けなかった。
しかし東条だけが彼の担当する月刊誌に、雨宮一馬にまつわる事件の記事と秀慈と絵茉に独占インタビューを掲載すると、雑誌は売れに売れ、瞬く間にフリーライターとして忙しい毎日を送る事になってしまった。