消された記憶-7
車はどうやらどこか遠くに向かっているようだ。東条は自分たちがつけられていないか確認しながら運転する。
「絵茉ちゃん、これからお父さんたちが事故にあった場所に向かう。」
「・・事故?どうしてですか?お父さんたちは自殺だったはずです。」
「絵茉、落ち着いて東条さんの話を聞くんだ。」
後部座席の絵茉の隣に座っている秀慈が彼女の手を握りしめる。
「君のお父さんたちは自殺じゃない。殺されたんだ、雨宮一馬に。」
「え・・・?」
絵茉は呆然と東条の話に耳を傾ける。彼は秀慈に打ち明けた事をかいつまんで話すと、絵茉に問いかけた。
「絵茉ちゃん、こんな話を突然されて何も考えられないかもしれないけど、
ここからは君の記憶だけが頼りなんだ。君は一度、誰かに連れ去られているはずなんだ。それは覚えているか?」
絵茉はパンクしそうな頭で考え込むが、全く記憶にない。
「いえ、わかりません。そんな記憶はありません。」
「そうか、それじゃあお父さんたちと事故に遭った日の事、君たちは何処にいくつもりだった?」
「遊園地だったと思います。」
「遊園地?!君たちはあの日、お祖父さんの所に向かうはずだろ?」
「え・・・?そう、そうですね。あれ・・・どうして私、遊園地に行くと思ったんでしょう・・・?」
絵茉の思考回路が絡まり始める。彼女の記憶が曖昧になり始める。
「あれ?でも待てよ、遊園地に行くとなると・・・つじつまが合う。先輩が落ちた崖はちょうど遊園地に向かう方角だ。どういうことだ?!」