崩落-7
秀慈と絵茉はいつもの様に車で学校へ向かった。狭い車の中、秀慈は肩を並べて絵茉と並んで座る。絵茉はいつもの様に無表情で車の外を眺めていたが、秀慈は昨日の光景が目に焼き付いて離れず、彼女に話しかけることも出来ずに時間だけが流れた。早く学校に着いてくれ、秀慈はそう願っていた。
学校で二人が顔を合わせることはめったになかった。秀慈は絵茉の事をなるべく考えないように一日を過ごしていた。
しかし放課後、秀慈が再び生徒総会の件で校長室を訪ねた時、中から困惑する大人の声が聞こえてきた。聞き耳を立てていると、どうやら教師が学校を去るように言われているらしい。この学校は教師も優秀でないとならないため、しばしば不適切な教師は突然に首をきられる。今は生徒総会の話しどころではないな、と秀慈は感づいてその場を離れようとした時、校長が言ったある言葉で彼は足を止めた。
「だからね、武田先生。あなたには他の学園に推薦状を書きますから、転勤だと思ってくださいよ。」
―――“武田先生”
それは昨日の夜、絵茉が言った名前だった。昨日の出来事は夢ではないと秀慈は確信する。一馬はこの学校に多額の寄付金を納めており、何かしらの権限を持っているようで、彼の一言で教師の運命を左右することは簡単だった。