崩落-6
ジリリリリ―――と目覚ましの音で秀慈は目を覚ました。
何か悪い夢を見たように彼の心は灰色に染まっていた。昨日の夜のあれは、夢だったのだろうか。沈んだ気持ちのまま支度を終え、食卓へ向かうとすでに絵茉はいつもと変わらず朝食を食べていた。
「おはようございます秀慈さん。」
いつもと変わらない様子で挨拶をする。
「おはよう秀慈。どうしたの?ボーっとしちゃって・・・。」
秀慈の母、春花が不思議そうに首をかしげる。秀慈は昨日のあれはきっと悪い夢だったのだろう、そう思い込むことにして絵茉の横に腰かけた。
「昨日ちょっと寝つきが悪かったみたいで、まだ寝ぼけているみたい・・・。」
「まあ、大丈夫?具合が悪かったら学校休んでもいいのよ。」
「いや、大丈夫だよ。」
絵茉も心配してくれているのか、秀慈の顔を見た。しかし秀慈は昨日のいやらしく乱れる彼女の姿を思い出してしまって、すぐに目を逸らした。春花はいつものように家政婦が用意した朝食を運ぶのを手伝いながら秀慈に尋ねた。
「そうそう、昨日の夜はすっかり忘れていてごめんなさいね。お父さんと話せた?」
秀慈はドキリとした。母親は知っているのだろうか?絵茉と父の関係を・・・。
「えっ?いや、昨日はやっぱりやめたんだ。今日帰ってから聞いてみる。」
「あらそうなの。それだったら後でお父さんが起きた時にお母さんから聞いてみるわね。今日はまだ寝てらっしゃるから。」
「ありがとう、助かるよ。」