事務所での密行 2-4
「ただいまぁ。」
紗英が自宅に帰ったのは夜の21時であった。真っ先に飛んで来たのは長女であった。
「ママお帰り〜!」
淋しかったのか、今にも泣き出しそうな長女を抱きしめる。
「ごめんね、遅くなって〜」
申し訳ない気持ちでいっぱいであった。
「遅かったね、疲れただろう。風呂に入るか?」
そう言って長女を預かるように抱き抱えたのは夫、宮地義孝だ。藤間は旧姓だ。会社では色々面倒なので結婚後も旧姓を使っている。
「うん、ありがとう。」
紗英もそうしたかった。自分の体はセックスで汚れている。浮気を悟られない為にも早く風呂に入り洗い流したかった。
シミだらけの下着はすぐに洗濯機の中へ入れ、たまっていた洗濯物を放り込んだ。そしてシャワーを浴びる紗英。体を洗いながら、今になり旦那以外の男に愛された肉体が不貞である事を強く思い知らされた。あんなに感じてしまった自分が情けなく感じる。家族の顔を見た瞬間、押し潰されそうになった。
しかし未だ体が疼く。正直に言うならば、今すぐにでもヤリたい。性欲が我慢出来ない。しかしその欲望を抑えながら丹念に体を洗った。
(せめてオナニー、したい…)
そんな欲望も必死で抑えて風呂を上がり洗濯機を回した。
「遅くなってごめんね??」
義孝は笑って答えた。
「たまにはいいじゃないか。旅行ぐらいゆっくり行くもんだからな。気にする事はないさ。」
「ありがとう。」
罰悪そうに控えめに笑顔を見せた紗英。しかし心の中では違う謝罪の言葉ばかり浮かぶ。
(私、浮気をしてしまいました。会社の人と一晩中、いえ、事務所でもたくさんセックスしてしまいました。気絶する程イカされて、他人のセックスに溺れてしまいました…。)
テレビを見る義孝の横顔を見ながら罪悪感に包まれた。
それから間もなくベッドに入った。紗英は誘われたら許すつもりでいた。フェラチオだけしてくれと言われたらするつもりでいた。しかし紗英の耳には義孝の鼾の音が聞こえて来たのであった。
紗英の心は悩まされた。自分を抱いてくれない不信感と浮気をした罪悪感。他人に求めた自分の不徳と旦那への不満が複雑に絡み合う。
(私はどうしたらいいの…?)
自分でも分からなくなってきた。しかし無意識に触り始めたクリトリスへの気持ち良さに深く溜息をついた紗英。不倫の意味をようやく知った気がした。
一方健太郎は大量に収めた紗英の写真を見て興奮していた。
「リベンジポルノか…。逃げらんないね、藤間紗英。ククク!」
紗英が事務所で性器を見せ付けて微笑する写真を見て危険な笑みを浮かべていたのであった。