誘拐された椿-2
ここは松元寿伯の別宅。
「くっくっく。どうしてくれようか…」
気絶した椿を板の間に放り出したまま、浪人たちは茶碗酒を舐めながら思案をめぐらせていた。
「こやつ、先日忍び込んだ女と何か繋がりがあるのではないか? 公儀の隠密かもしれぬ」
「まずは水でもぶっかけて、割れ竹で身体中を打ち据えてやろうか…」
「いや待て。このように美しい若衆をただ責めたのではつまらん。色責めにかけたらどうであろう? その方が楽しみが増すというものよ」
衆道の気があるのか、浪人の一人が椿の身体をまさぐった。
「ややっ!! こ、こやつ、女ではないか!!」
胸元に手を入れた浪人の表情が驚きに変わる。
「何っ!?」
おおっ、と声を上げて他の浪人も身を乗り出してきた。
浪人は仲間にも分かるように椿の着物の胸元を開き、大きくはだけた。
きつく晒しが巻かれた胸乳と、隙間から見え隠れする谷間が露わになる。
「ほほう、これは面白いな。女子とはのう…」
重右衛門も強い興味を示している。
「……ごくり…」
舌なめずりする浪人たちの下卑た視線が注がれているのはただ一点。
椿の穿いている袴の奥にある、可憐な乙女の花園である。
…ずるり。
重右衛門が腰の帯を解き、他の浪人が椿の脚を持ち上げて袴をずり下ろした。
椿は今、着物だけを身につけた状態となってしまった。このまま脚を開かせて裾をまくれば、その中身は丸見えとなる。
「どれどれ…。気の強い女剣士殿はどのような腰のものをつけておられるのかな?」
「やはり女だから、きっと腰巻でも巻いておるのだろう」
「いや、何も穿いておらぬかもしれぬぞ」
「いやいや、これだけの修練を積んだ剣客なら、下はふんどしをきりりと締めて気合を入れるものだ」
「なら賭けるか?」
「おう、いいとも。ふんどしに五十文だ!」
「なら俺は腰巻の方に賭ける」
「俺は穿いてない、だ!」
「よし、出揃ったところでいよいよ御開帳といくか…」
浪人は椿の両足首を掴んで思い切り大きく開かせた。今の言葉で言う『M字開脚』という形になる。
徐々に着物の裾を開いていくと、その様子を皆、息を詰めて見守っている。
ぐぐぐっ。
そして微かな衣擦れの音と共に、遂に椿の股座が露わになる。
…はたして下着はふんどしであった。
「やった! 俺の勝ちだ!!」
「畜生! そうだったか!」
「女だてらにふんどしとは恐れ入った! こいつは女剣士殿に一本取られたな!!」
男たちは最初がはは…と笑い合ったが、やがて押し黙ってしまう。
誰もが椿の股間に目が釘付けとなったのだ。
男たちの眼前に露わにされたその股座は、何とも言えぬいやらしさだった。
その腰に巻かれていたのは、赤い六尺褌。
前夜、椿が締めていたものと同じ種類のものであった。
もちろん椿は今朝、真新しいものに締め替えてきたわけだが、剣術の試合を何試合もこなし、一日分の汗とおりものがたっぷりと染み込んでいる。
しかも激しい動きで割れ目にがっちりと食い込んでおり、左右から乙女の若草がちょろりと覗いていた。
敏感で感じやすい椿は、食い入るふんどしに股間を擦られ続けてはしたない蜜液を滲ませており、赤い股布のところどころに白くかたまった恥ずかしい染みがこびりついている。
さらに蒸れたふんどしから立ち上る、甘くかぐわしい乙女の体臭。
つんと鼻をつくアンモニアの刺激臭がするのは、当身をくらって尿(いばり)が少々漏れてしまったのだろう。
何も穿いていないよりよほど恥ずかしい、たまらなく扇情的な光景だった。
「た、…たまらねぇっ!! もう我慢ならんっ!!」
浪人の一人が思わず叫んで、袴を下ろし始めた。
飛びかかろうとした瞬間、誰かにむんずと襟首を掴まれて引き戻された。
「な、何しやがるっ!!」
浪人が振り向くと、そこにはいつの間にかやってきた山鹿弦斎が立っている。
「お前ら、そうがっつくでない。せっかく手に入った上玉じゃ。もっとじっくりと楽しもうではないか!」
弦斎は左手を懐に入れたままで悠然と言い放った。
「…と、言いますと?」
重右衛門が丁重に問いかけると、弦斎はにやりと笑った。
「うむ。先日忍び込んだ牝猫は、知らぬことだったとはいえあっさり殺してしまい、いささか後悔しておるのだ。ワシらに恥をかかせたこの女は、お返しにたっぷりと辱め、ワシらの自慢の肉刀でさんざんに啼き狂わせた上で、女に生まれてきたことを心底悔やむような地獄の苦しみを与えてやろうぞ!!」
「わっはっは! それは良い趣向ですな! いつもいつも寿伯殿ばかりが上玉を独り占めして楽しんでおられるのは不公平だと思っておった! この女は我らが手に入れたのだから、我らだけで楽しもうではないか!」
「おお、そうだ! 寿伯殿の寝間に、女と楽しむのに使っていた南蛮渡りの媚薬や診察道具があっただろう? あれを持って来い!!」
「寿伯殿に内緒で楽しむにはここではまずい。場所を変えて地下蔵に連れ込みましょうぞ!」
「うむ、それがよい。それで決まりだ!」
寿伯は御殿医の仕事が忙しく、この別宅にはせいぜい月に三、四度しか来れない。次に寿伯がやってくる日まで時間はたっぷりあるのだ。
美しい獲物を前にした獣どもの獣欲はこれで一気に高まった。
「ぐへへ…」
それぞれに下卑た笑みを浮かべながら、恥辱に泣き叫ぶ椿の姿を心に思い描いているのだ。
(この美しい柔肌の隅々までもさらけ出し、あんなことも…こんなことも…)
想像するだけで、浪人たちの下帯の中の逸物が熱くたぎってくる。
椿にとって、一生忘れることの出来ない悪夢のような一夜が始まろうとしていた。
さて、これから椿の身に降りかかる恥辱と苦痛に満ち満ちた悪夢の宴へと筆を進めたいのはやまやまだが、ここで少々時間の針を戻させていただきたい。