〜 数学・作問 〜-1
〜 33番の数学・作問 〜
17号教官から学んだ基本的な数学テクニックは、単に問題を解くためだけではない。 相手の論理展開に応えることが数学の問題を解くことならば、自分の論理を伝えることが数学問題の作成だ。 最初は簡単な規則を応用した問題を、やがてそれなりに工夫した問題を、そして難解かつエレガントな問題を作ること。 数学を学ぶ目標の1つだ。
17号教官は、私達の先輩方が作った問題を例示してくれた。 どれも見事に答えまで誘導しており、それでいて難解な問題だった。 さらに、ご自身が学園Cグループ生の時に作った問題も見せてくれた。 一見すると解答不可能にみえて、ひょんなきっかけから謎が解けてゆくような、美しくエレガントな問題だった。
私達が作る問題は、とても前述の問題群には及ばない。 けれどそれなりに頭を使い、矛盾がないよう作問する。 技量が未熟なせいに加えて思考回路の回転が遅いため、長文も図形問題も苦手な私は、もっぱら得意な『場合の数』や『整数』分野で次のような作問をした。
……。
Q1.『1〜100までの整数のうち、4と7の少なくとも一方で割り切れない整数の数を求め、その数値に49903個を加えよ』
Q2.『7個の数字0、1、2、3、4、5、6を重複することなく用いて4桁の整数を作るとき、3500より大きい整数の数を求め、その数値に49600個を加えよ』
Q3.『5桁の自然数【4○9○3】個の○に、それぞれ適当な数を入れると9の倍数になる。 このような自然数のうち最大のものを求め、その自然数に77個を加えよ』
Q4.『自然数のうち、10進法で表しても5進法で表しても、3桁になるものの個数を求め、その数値に49975個を加えよ』
Q5.『nを自然数とする。 同じ数字を繰り返して用いてもよいことにし、0、1、2、3の4つの数字を使ってn桁の整数をつくる。 ただし0以外の数字から始まり、0を少なくとも1回以上使うものとする。 【21200】が何個目の数字かを求め、その数値に49737個を加えよ』
Q6.『立方体の各辺の中点は全部で12個ある。 頂点がすべてこれら12個の点のうちのどれかであるような正多角形は全部で何個あるか求め、その数値に49971個を加えよ』
Q7.『赤、青、黄、白、緑の5色を用いて、正四角錐の底面を含む5つの面を塗り分けるとき、5色全部または一部を使って隣り合う面が別の色になるよう塗り分ける方法は何個あるか求め、その数値に49180個を加えよ。 ただし側面はすべて合同な二等辺三角形で、回転させて同じになる塗り方は1通りと考える』
Q8.『乗客定員9名の小型バスが2台ある。 乗客10人が座席を区別せず2台のバスに分乗するとき、人も車も区別して分乗する方法は何個あるか求め、その数値に48978個を加えよ』
Q9.『分母を700、分子を1〜699までの整数とする分数の集合{1/700、2/700、3/700、……、699/700}をつくる。 この集合の要素の中で約分ができないものの個数を求め、その数値に49760個を加えよ』
Q10.『正二十面体の1つの頂点にあつまる5つの辺の三等分点のうち、頂点に近い方の点を結んでできる正五角形を含む平面で正二十面体を切断し、頂点を含む正五角錐をすべて取り除いた。 すべての頂点で同様に正五角錐を取り除いたとき、残った多面体の面の個数、辺の個数、頂点の個数を合わせ、その数値に49818個を加えよ』
解答はすべて『50000個』に統一した。 『50000個』、『5万個』、『ごまんこ』、『ゴマンコ』、『GOMANKO』、『OMANKO』、『オマンコ』……。 作問を終えて、17号教官から『正解は?』と聞かれるたびに、大きな声で『オマンコです!』と叫ぶためだ。 教官に『自分達に相応しい解答を用意しなさい』と言われ、私にはこんな低レベルな駄洒落しか思いつけなかった。