メロひな 〜愛憎の行き着く果て〜-3
スゥ…無邪気な笑顔。
「ん〜。ウチはそんなんは、よ〜わからんわ〜。」
そう言っていつも景太郎のそばで無邪気に笑って戯れていた。
それでウチは幸せだった。
そして、これからもそうでありかった。
…でも。
最近、ひなた荘内に流れる不穏な空気。
それは明らかに景太郎をめぐる争い。
この争いの勝利者は、ウチから景太郎を奪い去ってしまうだろう。
それだけは、許せない。
「けーたろを奪っていく奴はゆるさへん。たとえ、仲のええ同居人であってもな。」
褐色の無邪気な笑みは、歪んでいた…
むつみ…幼き日からの想い。
「なっちゃん。なっちゃんもけーくんのこと、好きなの?」
「じゃあさ、じゃんけんでどっちがけーくんのお嫁さんになるか決めよーよ。」
「あれれーー。へへへ…負けちゃった。」
「………」
それは、幼い日の思い出。
昔、わざと負けた、けーくんをかけてのじゃんけん…
本当は…負けて上げたりしたくはなかった。
でも、なっちゃんが悲しむのは嫌だからと私はわざと負けてあげた。
そして、私は沖縄でのけーくんをかけてのじゃんけんで、またわざと負けた…
このときも、本当は…負けてあげたりはしたくなかった。
でも、なっちゃんが悲しむのは嫌だからと私はわざと負けてあげた。
記憶喪失なんて嘘をついた…
ただ、確認してみたかった。
自分の気持ち、そしてなっちゃんとけーくんの気持ちを。
時折、私は想う。
あのじゃんけんに勝っていたら…勝っていたら、私は、けーくんと…
昔からの私の想い…
けーくんとなっちゃんの間で揺れる私の想い…
けーくんは、どうして気づいてくれないの?
今日もまた、私は一人悲しい夢を見る…
けーくんと私が結婚式を挙げている、現実には叶わぬだろう悲しい夢を。
「それでも…けーくん…」
溢れる涙が、今日も枕を濡らす。
きつね…親友の影に隠した想い。
ウチはほんま、アホやで…
これまでも景太郎に何か特別な感情を抱く瞬間はあった。
特に留学から帰ってきてからは本当にいい男になったと思う。
ウチも女や。いつも、いつも、景太郎となるをくっ付ける為に行動してて、虚しさを感じないわけやない。
せやけど、親友やから…なるは。だから…。ふう…。やれやれウチもほんま、お人よしやなあ…。
そう思って来た。だけど…それも、もう…。最近の私はオカシイ。この前、二人がキスをしている所を見たとき、
ウチは嫉妬してしまってた。本来ならば喜ぶべき事なのに…親友の幸せを…。
けど…ウチはもう、あかん。自分を偽るのも限界や。
「ごめん、なる…でもな…ウチも…ウチも女なんや。」